雑記 教室の生徒さん

以前書いたことがある通り、今開講している教室には、人数は多くないものの、年齢も性別も関係なくいろいろな生徒さんがいらっしゃいます。
昨日も新たに生徒さん(仮にOさんとします)が参加されることになり、いつも通りひとつふたつみっつとボールを少しずつ増やして扱えるようにする過程を踏んでもらったのですが、みっつの扱いにまず必要なふたつの投げ方がひとまず形になったかなというところでちらりと時計に目をやるとだいたい10分くらい。そこからみっつの投げ方を形にするのに5分ほど。Oさんはややご年配の男性でしたので、習得のスムーズさにすこし驚くとともに安堵もしました。

というのも、もちろんご年配の方だけとは限りませんが、長年の体の使い方や考え方の定着があると、どうしても先に進みづらいところがあり、その進みづらさに早いうちから諦めを感じる方も少なくありません。このようなことは学習一般に言えることでもあると思いますが、ジャグリングは、有り体に言って、落とし所(そもそも試験でもなければ何かを学ぶとか楽しむというのに落とし所などないのですけど、マイナージャンル故に誰かと楽しみを共有しづらいという意味もあります)が見えづらく、できなくてもまあいいや、と思ってしまいやすいのかもしれません。ゆえに、自らその学習の過程にえいやと踏み込み、試行錯誤を繰り返しジャグリングを楽しもうという姿が見て取れると、ひとごとながら軽い高揚感すら覚えます。

改めて練習するOさんの体を見ると、身長は170cmあるかないかという感じですが、腕が長く、手もかなり大きめ、姿勢も定まっていて、なんらかのスポーツの経験があるのかもと思いましたが、子供の頃に野球で遊んだくらいとのこと。Oさんは男性だからかお手玉遊びも経験がなく、軽い運動(Oさんは「老人の機能開発」と仰っていました)ができればという理由でジャグリングをやってみようということでした。しかし、教えられたことをなぞるだけではなく、自分の感覚と思い通りにならないボールの動きとのズレを確かめるように色々なやり方で練習するセンスは素晴らしいものです。確かに、聞くところによれば他の地域の教室でも、ご年配の方がふとしたきっかけで始めたジャグリングに熱が入り、5ボールへ挑戦しているという例もあるようです。年齢は決して学習の妨げにならないと、そんな話をしていたら、年齢のことはあまり言いたくないけどわたしも今年80になるんです、とOさん。えー。

近頃は80代でも元気な方は珍しくありませんが、勝手に70代に差し掛かったくらいの方と早合点していたので、その学習のセンスと若々しさに他の生徒さんと一緒に驚かされました。年齢は関係ないなどと今しがた言ったこの口が、えー、まさかなどと吐いているのだから、我ながら適当なことばかり言っているものです。と、同時に、矍鑠というも不似合いなOさんの若々しさに、学習という、自分にとって未知の身体にむかって進むプロセスには、年齢という時間の厚みをぽーんと飛び越える生そのものの軽やかさがあるのだなあと思わされたのでした。