もういっそアイドルの話

「LIVE AT WEMBLEY」のBlu-rayが届いて、4月のLV以来、通してこのメモリアルなライヴを見るのは初めてでしたが、如何せんWOWOWでの映像を不完全版とはいえ見倒してしまったがために、画質と音質の良さに頷くばかりで、たいした感想が出ないのでした。

思えばこのライヴを見てしまったがために、遠路はるばるヨーロッパまで出かけていったわけで、私個人としてもメモリアルなライヴですが、見終わったあと、その感覚をわずかでも漏らさないようにと、しばらく口を開きたくなかったあの経験の強烈さの前では、感慨にふけるなどというみすぼらしさは、無用のものです。

あくまでも私個人の感覚であったことは断っておくとして、このライヴの前半は決して上々のものではなく、むしろヒヤヒヤさせられるところすらありました。SU-METALも、どこか観客のレスポンスの固さにいくらか怯んでいるのでは...と勘ぐるほどで、「紅月」も、派手な演出に対してやはりベストとは言い難いパフォーマンスであるように見えました(8月の"白ミサ"東京公演では声が出倒して喉開ききってそれはそれは凄まじくて号泣です)。対してYUI-MOAの輝きたるや尋常ならざるもので、新曲もリラックスして演じているようで、このあたりから尻上がりにライヴは、というか三人はノせられて、ライヴ後半「IDZ」後の「ギミチョコ」という下りでSUが破顔して楽しんでいるのに、もはや前半の危なっかしさはどこにもなく、「RoR」一曲のみのアンコールの潔さには、すべてを持っていかれました。あー、無限にできるなこの話。

ほんの偶然が、私とBABYMETALとを結びつけた一年に、驚かされ続けでしたが、ここまで大きなものでなくとも、よく知らなかったところに、あるいは知ろうとしなかったところに驚きがあるということに、揺らされ続けていた数年である気もします。アニメやヒップホップも、割と最近まで縁遠いものでした。


しかしまあこれ、実は長い前置きでして、ブリッジなのです。



先日のこれ、まんまとハマっておりまして、いや、それというのもPVでは見えなかった振りの全容(といってもTVサイズ)が見えたらば、これが素晴らしい仕事で...いやなんですかもう、かぶせ音源の短縮版にも関わらず涙腺が緩むほどでしたよ(そもそもこの曲がものすごーく気に入っているからでもある)。

私はダンスの技術判断はもちろん、そもそもド素人なので、ひどくざっくりした理解のもと進めますが、基本的に、アイドルのダンスの振りは、ダンス初心者の人間でも習得にそれほど時間がかからない前提の水準で作られていると思います。もちろん、長年のレパートリーともなれば固有のニュアンスを出すことが難しい、という話にもなるでしょうが、ひとまずおいて、形式的には誰でも踊れる、というものが多いでしょう。
それに加え、キュートであるとかセクシーであるとか、アイドル特有の記号的な操作も多分に含まれ、正直言ってダンスであることの魅力とはまた別のものを楽しむ、そういう振りが少なくはない気もします。

が、TAKAHIROこと上野隆博さんの振りは、「サイレントマジョリティー」や「語るなら未来を」を見ていて、それとは違ってダンスのダイナミズムを保ちつつスターシステムを的確に表現しているものだという感触でした。そしてそれがやはり「プロ」の仕事とでも言うしかない的確さなのです。

「二人セゾン」の振りはというと、おそらく「秋らしく」というようなオーダーに応えたものに思えますけれども、まずは落ち葉が舞うイメージ=バレエという大きな線が見えます。季節感をもたせながら、大枠でグループのパブリックイメージに沿わせつつ、同時に、曲の解釈も進めて細部に至る仕事の細かさにも気付かされます。

たとえば私が心動かされるのは、サビ前にセンターで今泉唯佑と米谷奈々未(ここ当然小林由依の間違いです。見返して気づきました。※2017年12月8日)が手を合わせたあと、それをいったん解いて、絡ませてからまた手を合わせるというディティールでの落葉のイメージの再現の芸の細かさ(!)は、歌詞の「君は突然 僕のイヤホン外した」という"イヤホンの絡まりと解け"すらも想起させ(!!)、ごくわずかな技術負担で多層なイメージの喚起すら可能にしています。
またセンター平手友梨奈のソロダンスパートも、見た目の派手さほどには難易度が低いだろうことを感じさせない、バックのグループとの対比(このテイクがたまたまそうなのか、ひどく微妙なグループからの離脱感も気になる)には、ピナ・バウシュの「春の祭典」からの引用を思わせる緊張感が漂っていて、またそれを違和感なく達成できる平手さんの集中力に感嘆。。いやいやいやいや...ほんとフルバージョンで見たいです。ていうかライヴに行きたい。


正直に言って、秋元さんのプロデュースするグループに、ここまで心動かされると、さすがにたじろぎます。ここのあたりの経緯も話し出すとまたかなり長くなるので端折りますが、いや、欅坂46っていうグループ、すごくすごく大事にしたほうがいいんじゃないですか? 秋元さんの仕事に完全に興味を失ってた私ですら、ものすごく期待したくなってます。



わたくし、啓蒙的な心構えに乏しいのでベビメタも欅もこれ以上多くの人に見てほしいとはあまり思いません。が、アイドルという"ジャンル"の中でこんなにも刺激的なアプローチがいくつもあると、こんな目立った場所であるがゆえに、見過ごされてしまいそうな面白さがあるんじゃないのかと思うとひときわ興奮します。それは、いくらかでも映画に親しんで、先達の導きを経てジャンル映画を知り得た経験が後押ししていそうです。ジャンル映画もまた、多くの人の目に触れられながらも、忘れられていってしまう、そういう宿命を持っていることもしばしばです。こっちもね、限りなくできる話が山ほどありますですよ。



というところで、あれこれやってるうちに11月ももうすぐで終わるんですねえ。次回は、今年最後のお知らせとなりそうです。
ホゴノエキスポについてはちょっとずつお伝えすることも出てきそうです。