20190108 ゼアゼア解散について

いやあ、参ってしまった。

natalie.mu

t.co

 

NECRONOMIDLEも現体制は昨日が最後。でんぱ組.incからは夢眠ねむさんが卒業。すべて同じ日とは。しかし自分にとっては、なんといってもTHERE THERE THERESの解散です。

 

 

 これらの事柄について、うまいことを言うことも、言おうとすることもできず、広義の当事者たちの感情の噴出を眺めながら、他ならない自分自身もたいへん感情的になっているというありさまです。悲しんでいるかといえばそうでもなく、落ち込んでいるという感じでもなく、漠然と、しかし強く強く悔しいと思うばかりです。悔しいのです。

 

自分が何かできたかもしれない、などというのは思い上がりです。とはいえ、ここでも、あるいは直接にも声をかけた人たち、彼ら彼女らに、こうした「アイドル」たちに巡り合うタイミングがやってこなかったこと、それが悔しい。他人の都合なのですから、仕方ないのです。私だって日がな宣伝していたわけでもない。誰が悪いわけでもないし、見る側にもやる側にも事情がある。それをすっ飛ばしてこんな風に悔しいと考えること、それが思い上がりというやつです。

 

しかし、誰かに届かなかったことで、あの素晴らしさたちが無かったことになる、日々の塵芥と同様に、ただ流れて消えてしまうことに、悔しいと思ってしまうことは止められません。むろん、続きはあるし、人生が終わったわけでもない。しかし、なのです。

 

どうにも冷静さを欠いたおかしな物言いだけれども、刺激された感情に基づいて何かを言ったりやったりしてもいい、それはちょっと知性に悖る振る舞いかもしれないけれど、別にいい、これがどこかに利用されたらば、たいへんマズい不用意な理路ではあるが、こと「アイドル」という文化圏においては、ひとまず許されている、と私は思っています。それが素晴らしいかどうかまでは判断を留保しているが、見苦しくても泣いたり喚いたりしてもいい、という文化の形だと受け取っています。エモいからいい、ではなく、エモくなってもいい、しかたないということです。自分としても、こんな書き方でいいのか、と突っ込みつつも、実にすらすらと自然にキーボードを叩いています。

 

 

昨日、友人たちとのグループラインでもゼアゼアの解散が驚きと共に話題になりました。そこのグループには、最近(半ば強引に押し付けられる形で)、アイドルに興味を持ち始めて、ゼアゼアのことを全く知らない人が一人いたので、勢い余って自分からグループの沿革や、興味の背景まで含めて長々と紹介させてもらいました。何度もここで書いてきましたが、改めて。

 

 


BELLRING少女ハート(ベルハー) 2016/08/05


THERE THERE THERESには前身とも呼べるグループがいます。それが「BELLRING少女ハート」です。私は"ベルハー"崩壊後に彼女たちを知ったので、実際に見たことはありません。以下の記事が一番を要を得て、グループについてまとめられています。


tagkaz.hatenablog.com

 

しかしそれにしても、上の動画のぐちゃぐちゃさといったら、どうしたことでしょう。私は今も、ステージ上の強度においてはBABYMETALが最も強いと感じていますが、ベルハーの、この離散的ながら異様に強い磁場を作ってしまうパフォーマンス空間、フロアと相互的に作っていく、トランシーでいながらとてもユーモラスなそれについて、こうして動画で見るたびに圧倒されてしまいます。たぶん、パフォーマンスにまつわる映像で、人生で最も印象深いものの一つであることは間違いありません。ルールは破られて、ほとんど無法なまでに荒れきっていますが、無防備につい「美しい」と思ってしまう。私にとってベルハーのパフォーマンスは、間違いなのかもしれないけれど、どうしても惹きつけられてしまうものです。

 

そして「THERE THERE THERES」です。"ベルハー"のメンバーを2人残し、5人で2017年2月から活動開始。しかし一条さえきが5月に脱退し、有坂玲菜・緒倉かりん・カイ・平澤芽衣の4人で、同年12月31日まで活動しました。そして、この日をもって緒倉かりんが学業の都合により脱退。同日、"ベルハー"創設当初から崩壊時まで在籍した唯一のメンバー、朝倉みずほが加入。翌年2018年5月4日には小島ノエが加入。現在に至るまで5人体制でした。


There There Theres 2017/9/11 渋谷クラブクアトロ 「Beat Happening!」


There There Theres 2018/03/03 マイナビBLITZ赤坂「アイドル甲子園」


20180902 There There Theres 夏の魔物2018 in 台場野外特設会場


20181112 THERE THERE THERES Sneak Kill


単に私の好みの映像なので、かなり偏ったものになっていますが、ゼアゼアはベルハーと違い、ステージのフレーム内で、没入度を高めようとしていた方向性もありました。
無論、フロアと相互的にハッピーな空気を作る楽曲もあり、その多面性が表現の幅として成立していました。幸せなのか悲しいのか怒っているのか分からないけれども、異様な情念が吹き上がるベルハーから離れ、ゼアゼアはゼアゼアとしての表現を手に入れようとし、事実手に入れたように見えます。


[Live] THERE THERE THERES - スナッキー (at LIQUIDROOM)

説明欄にあるように、冒頭の日付が堂々と間違っている。これもらしいといえばらしい...

 

時間が前後しますが、下の動画は、朝倉みずほ加入時の映像です。新メンバーのお披露目と称して、ステージにみずほさんが現れたときの、様々な感情が入り混じった悲鳴のような怒声のような叫びと体がぶつかり合うフロアの空気を、私はきっと一生忘れられません。


There There Theres 2017/12/31 渋谷O-nest 「AQBI DIG 04」


その一年後。朝倉みずほと柳沢あやのによるコラボ。曲はすべてベルハーから。どうしてこの狂騒が巻き起こるのか、その文脈を共有しないものには伝わりづらいかもしれませんが、狂騒それ自体に、人を強く惹き付けるものがあると思います。


2019.1.1 コラボ・あやのみずほ 【Sunrise GIG 2019】 @O-nest

 

ゼアゼアは、ゼアゼアの表現を手に入れつつも、ベルハーとの比較を免れ得ず、フロアもまた「ベルハーの亡霊」がときたま現れもしました。それについては、実に多くの立場があります。表現的には切り離されてはいるものの、表面的には楽曲や衣装から、またそれぞれの感情から、その記憶から逃れきることはできなかったはずです。ただ、私はそれだからこそ、厚みのある表現を目指すことができたのではないかとも思います。すべてを抹消する必要もないし、ときおり亡霊が漂うフロアも、あくまでも私の立場からは、見ごたえがあり、居心地が良かったのです。

 

みんな頑張り屋の良い子たちだし、彼女たちのステージが大好きでした。ただ結成当初からずっと、グループの中に壁みたいなものができてしまいます。お互いが好きなのになぜか歩み寄れなくて、ワイワイしてても孤独、みたいなものです。このようなコンセプトで続けるには、実はしんどい関係でした。グループ活動に求める空気、居心地が、それぞれで食い違っていたんだと思います。

 

ディレクターの田中紘治は、解散についてのコメントの冒頭でこう言います。
それは、狭義の当事者にとって、あるいは田中さんにとって大きな障壁で、これ以上続けられない大きな理由だったのかもしれません。私はそのことについて、何もわからないし、与えられたステージがどうだったかでしかないけれども「お互いが好きなのになぜか歩み寄れなくて、ワイワイしてても孤独」なのはフロアもそうだったし、そうだったからよかったと言える–––繰り返しますが私の立場、からは–––はずなのです。そうじゃなかった、皆が親しくて孤独はなかった、という方も、もちろんいると思います。そういう方々のほうが多かったかもしれない。ただ、孤独が確保されつつ、強い感情を刺激されるTHERE THERE THERESのパフォーマンスが、私にとって比べるもののないものだったことは、はっきり言えます。

 


...でも、こんなにも心酔していても、納得のいかないステージはたくさんあるし、上達がゆえにかえって目立つ至らなさも感じていましたよ。だからダメではなくて、ここから長い時間をかけて、心置きなく「上手く」なっていく途上にあるのだろう、と思っていました。アイドルに限らず、何ごとも単純な「上手い/下手」の範疇で取りこぼしてしまう良さがあるし、でもそこから抜け出そう、あるいは抜け出てしまう時期がやってくるものです。ある時期には「上手さ」それ自体だって自分を縛る。単純に線的にはできていません。だからこそ、田中さんのコメントがこう結ばれていることに、とても希望を感じる。

 

いまは継続が無理ですが、もしかしたら、と心の片隅で信じていてもらえたら、またいつかこの5人で走り出すかもしれません。
全員、三十過ぎてからでもいいんじゃないかなと思ってます。

 


そうだと思う。三十過ぎてからやればいい。実際そうできるかは別に、そう考えられるアイドルのディレクターがいることに、希望を感じず何を感じればいいのか。そして何より、今後についてこう知らされています。次の活動が、彼女たちのステージを必要としている、まだ見ぬ観客を一人でも増やすことを願っています。

記事の締めくくりにそれらしく、ふさわしい歌詞の引用とか、しないからな!待ってる!!

 

■平澤芽衣

解散後、よりダンスを重視した新グループを結成します。

詳細は2月末にお伝えします。

 

■有坂玲菜

お休みと準備期間を挟んで、4月中から活動再開。

詳細は2月末にお伝えします。

 

■小島ノエ

しばらくお休みと準備期間をいただきます。

また活動予定なので待っていてください。

 

カイ、朝倉みずほもAQBIでの活動がある場合はアナウンスさせていただきます。