20191209 10年代の好きな映画10本

2010年から2019年までの間に"日本公開"された作品から10本選びました。

 

なぜ"日本公開"に合わせてるのかといえば、これもしかして製作年もっと前じゃね?と調べたら案の定だった作品が2本もあったからです...もちろん他に気に入っていた作品もありますが、まあこっちのほうが好きかな!とざっくばらんな態度が厳密さに優先しました。

 

選定は、あくまでも私的な興味関心と重なったことが優先されます。ゆえに『ホース・マネー』や『15時17分、パリ行き』や『ゴダール・ソシアリスム』は、映画経験として忘れがたくとも、好みという範囲からいうと外れてしまうのです。ギリギリで『アウトレイジ』『アンジェリカの微笑み』が入りそうでしたが、別の作品に譲りました。しかしやっぱ『リアルスティール』『ラッシュ/プライドと友情』も捨てがたかったな...まあ、こんな感じでキリはない。ではランキング形式でどうぞ。

 

 

 

 

 

 

10位 アンストッパブル / トニー・スコット


列車が暴走し、それを止める。これだけの話に、どれだけのアクションが盛り込まれているか。三宅唱監督の映画講義において指摘された、トニー・スコットにおいて、登場人物が出来事に参入していく決定的な瞬間に訪れるアクションである「逆走」のモチーフは、映画中盤に現れるのですが、映画序盤で不吉さを担う、「背後を見ること」もまた、この逆走にあっては市民を救うためのポジティブさとして描かれます。マイナスとマイナスの掛け算がプラスになるような演出が、ごくさりげなく、しかし大胆に提示されている。また、トニー・スコットで描かれる、アクションの中心にいる者を、そこから遠くにある者たちがモニターなどで見守り、そしてそれらがしばしば強い肯定感に満ちていること、これらに、いかに勇気づけられるか。最高です。

 

9位 たまこラブストーリー / 山田尚子

 

TVシリーズたまこまーけっと』の映画化として、愛くるしいデラをお役御免にしたうえで、たまこともち蔵の恋模様が、きわめて上品に、しかし燃えるような情熱を惜しむことなく展開していきます。ラストの京都駅ホームでたまこがもち蔵にすべて投げ渡してしまう紙コップの糸電話がもち蔵から投げ返されるぎこちない往復に至るまで、わずか80分未満。サムネイルに描かれている鴨川デルタの夕景の美しさとストリングスの劇伴の美しさも忘れがたいです。おそらく、初めて買ったアニメのBDかもしれません。

 

 

8位 さらば愛しきアウトロー / デヴィッド・ロウリー

 

今年見たばかりの映画を入れるのはどうかなあと迷いましたが、これほど自分にフィットした映画も近年ありません。Jackson.C.Frank"Blues Run The Game"なんて、私の大好きな曲が流れ出す、夜景でのカーチェイスに滂沱の涙。刑事であるケイシー・アフレックが居合わせるところで行われる銀行強盗のシークエンスを見直すのが楽しみです。

 

7位 嵐電 / 鈴木卓爾

 

これも今年です。鈴木さんの映画は機会がなく、2本も見落としてしまっていて大きな損失を感じますが『ゲゲゲの女房』の素晴らしさからなにひとつ変わらないどころか、ますます変幻自在に、魔法としての映画を見せてくれます。

 

6位 Playback / 三宅唱


現在、世界で最も新作を楽しみにしている映画監督となった三宅唱さん。もったいぶりもセンチメンタリズムもなく、あっけらかんとおじさんたちを高校生にしてしまって、またそれをことさらに面白がるでもない、絶妙極まりないバランス。当時20代と思えないほど、ベテラン俳優たちから自然な演技を引き出していて...いや、それはより正確に言うなら、俳優全員に共通のグルーヴを与えていて、またそれが「いい雰囲気」としかいいようのない柔らかで魅力的な空気に包み込まれているのに、驚くしかないのです。

 

5位 それから / ホン・サンス

 極端にいじくりまわされた時制と、そんな挑戦的なスタイルが結局はキャリア最高にだらしないくそオヤジの醜態を描くのに結実していること...あまりの馬鹿馬鹿しさに、めずらしく映画館で笑ってしまった。同時にちゃっかり雪の降る夜景なんか撮ってしまう図々しさ。

 

4位 ファンタスティック Mr.FOX / ウェス・アンダーソン


2009年制作。。『犬ヶ島』はもちろん『グランド・ブダペスト・ホテル』でも満足できなくて、まあそれはこのアニメが素晴らしすぎるからで、しかたない。

 

3位 シルビアのいる街でホセ・ルイス・ゲリン

 

これもスペインでは2007年公開...しかし、映画館に三度足を運んだほど気に入った作品です。セリフがないという意味では準サイレント映画であるし、しかし芳醇すぎるほどの音・音・音。ひとまず、映画という視聴覚への快楽装置のもっとも極端な例のひとつではないでしょうか。

 

 

2位 ナイト&デイ / ジェームズ・マンゴールド


この10年で最も繰り返し見た映画じゃないでしょうか。トム・クルーズは常に素晴らしいですが、この映画のトムはほとんど完璧。常にヘラヘラとして、それでいて真面目。あらゆる人が絶賛するトム・クルーズの美点を最上級に引き出してくれています。相方のキャメロン・ディアスもまた素晴らしく、トムに引っ張られる役どころがしっかり後半で逆転、ジェームズ・マンゴールドのツボを押さえまくりの演出はいちいちがおかしい。省略のギャグもふたりにぴったりですが、敵方に打たれた注射に酔ったキャメロンが、突然大胆にトムを誘惑して、それに応えるよう銃弾の降るなか、ごくゆっくりと彼女に歩み寄りキスを交わすシーン!
全体に、私が最も好きなスクリューボール・コメディの手触りが未だにハリウッドで息づいていることが伝わってくる点も含めて、この10年間と問わず、最高に好きな映画です。

 

 

1位 次の朝は他人 / ホン・サンス


例外的に同一の監督の作品を。この10年は私にとってホン・サンスの10年でした。 似たような映画を大量に作り続け、ときに技巧的に過ぎて、最上位の作家ではないのかもしれませんが、この映画はただただ身震いするほど美しく...「官能的」という語彙を用いざるを得ません。反復される物語はホン・サンス得意の方法ですが、そうした形式に音楽に近い受け取りをしてしまいますし、またモノクロの画面こそ、そうした美しさにふさわしいと判断してしまうむしろ衒いのなさ(『それから』もモノクロですし、自分の嗜好はあきれるほど単純です)も好ましく思います。また、ホン・サンスの映画は大抵がどうでもいい話をどうでもよさそうに繰り返すだけ、とはよく言われますが、そこには性の香りが執拗に漂います。それを惨めではあれ、こうして美しさのもとに描かれると、自分は弱いのかもしれません。

 

 

 

映画は不勉強になる一方、やはりいちばん自分に合った芸術形式です。
14歳から本格的に見始めて以来、ジャグリングの練習以外でもっとも時間を費やしたのが映画のはずです。

しかしこの10年というと、自分の20代がおおよそ収まるかたちですが、そうした世代的な心境の反映はあまり感じず、むしろそれなりの数を見通した上で得られる展望に基づいた映画の見方や好みの出方が、選んだ結果おもしろく思いました。特にアメリカのジャンル映画に対する距離は、ほぼ生得のものでなく、タランティーノ蓮實重彦といった人たち(全然違うふたりですが笑)に導かれつつのものです。これはあたり前のことだけど、なんでも数をこなすことで自分の趣味なんぞ変わっていくものだと思います。

 

 

そうそう、そもそも映画を最初に見出したとき助けになったのはこのランキング本でした。多くの人のベスト10を眺めながら、趣味の良さや悪さを勝手にわけも分からず批評していたものです。「ベスト10」遊びが好きなのは、この頃から変わっていないようです。色んなジャンルの「ベスト10」が見られるといいなあ。ぜひ、どうですか。

 

大アンケートによる洋画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版)

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1988/07
  • メディア: 文庫