6月に気になったものと上半期よかったもの

...ハッと気づくと1ヶ月近く時間が経っていました。日々が過ぎ去るのは早いですね...(ゲームをしているから)
パフォーマンス活動の報告は変わらずできそうにないのですが、動きがありそうなことはいくつかあり、追ってお知らせできれば。今日はこの1ヶ月で気になったものなど、それぞれ短く。

 

 

『『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊』
土曜にたまたま配信されていることを知り、途中から観覧。翌日も見逃したところだけ見ました。テキストについては途中までということもあり、よくわかっていない部分が多いのですが、配信のあり方についてはさすがのひとこと。すごいなーと思わされました。
どこかカフェやギャラリーのようなスペースの窓/壁際に据えられたテーブルのうえに、長方形と正方形の簡易スクリーンがフォトスタンドのようなものに貼られて、スタッフの手によって配置されます。謡と音楽の七尾旅人さんと内橋和久さんが冒頭から終わりまでテーブル上に映されていて、その他の出演者は出番が来るとスタッフが所定の位置に設置したり撤去したり。その手にスクリーンへ投影している映像が重なる瞬間も。
要するにミニチュア的にテーブル上で舞台を再現しているわけですが、画面内にはテーブル・スクリーン・スピーカー・スタンド照明・カレンダー(日付もグリッド)と矩形の連鎖があり、ご丁寧に木枠が鎖状に連結しているらしい飾りが吊るされて(おそらく元々スペースにあったものだろうか)揺れていたりするのに気付かされます。こうした矩形のフレームは、視聴上の画面とも重なりあいますし、プロセニアム舞台からの遊離=幽霊的な上演を想起させれられもします。そもそも「幽霊」とは認識のフレームの外側に生起するものでしょう。また、テーブルが接する窓は路面に面していて、ときおり通行人や車の姿が見えたり、上演前・転換中・終演後には近くの横断歩道のメロディ音が聞こえてきます。フレームの外、認識の外で飛び交う幽霊たち。能を模しつつ扱う主題がザハとその建築であり高速増殖炉もんじゅであったりするわけだから、そうした"降霊術"は必然的なものだったのでしょう。
くわえて録音もすばらしく、パッケージした映像を配信したほうがベターなのは、ほとんど固まってきている気がする。配信コンテンツは、そこに動員的な効果はあるにせよ、やたらな生配信の臨場性に頼らずしてやってほしい。

 

グランド・セフト・オートV

さいこうです。RDR2と違って、市民の命はスラップスティックな暴走運転に巻き込まれるギャグとして消費されます。その倫理性の乏しさも、そもそも異常者と狂人しかいないロス・サントスという街では切実な意味を持ちません。主人公たちの延命は誰かの絶命でしかないという底の抜けた倫理的徹底は、ゲームにおいて最も重要なアイテム(ゲームプレイ時間のほとんどは車を運転している)であり、同時に最もどうでもいいアイテム(すぐに壊れるしすぐに修復されるし、すぐに盗んで手に入れられる)である「車」に最も強大な敵を押し込んで、海に突き落とすことで実にそっけないクライマックスを迎えるのです。
憎たらしい奴らはそれなりに悲惨な死に様(まあそれもギャグなのですが)だったりするのだけど、このクライマックスに至るまでの殺人ミッションのいっそ作業的で淡々とした雰囲気こそ、GTA5の良さであり、かたやオンラインでとてつもなく荒れ放題になってるらしい一因なのではとおもったり。葛藤や煩悶が雲散霧消することで、ただ行為の快楽だけが残るような。
それにしても無駄口の軽妙さといい、ラストシーンといい、スタッフにタランティーノのファンが相当いるのか、あるいは今アウトローを描くときタランティーノは内面化されてしまっているのか、気になるところ。2本プレイしただけですがRockstarのゲーム、大好きですね。『L.A.ノワール2』を期待しています。

BLACKPINK「How You Like That?」とビヨンセ
ティザーが細かく何本も出てからのMV。ブルピンの曲は相変わらず楽しい。テレビ番組のパフォーマンスもアップされていましたが、メンバーたちがずいぶんイメチェンしている様子。日本のアイドルが同一性を確保するためなかなか髪型を変えないらしいのと好対照ではないでしょうか。
あいかわらずK-POPは横目でチラチラ確認する程度ですが、ブルピンはとくにビヨンセを参照してるらしいことに意識が向かざるを得ません。女性をエンパワメントするような歌詞と自律的で挑発的なメンバーのキャラ(たぶんオフショットではそれとのギャップが楽しまれたりするのでしょう)。久々になんとなく「Run The World(Girls)」のMVを見たけど、ビヨンセのすごいことは、圧倒的なリーダーシップを誇りながら、周りに居並ぶ女性たちにも溶け込むこと。オンリーワンでありワンオブゼムであるといえばいささか陳腐だけども、たとえばコーチェラでもピラミッド型のステージを見せつけて、ヒエラルキーは視覚的にも明らかなのに、そこに集められた彼女ら彼らと常に連帯がある感じ...なんなのでしょうね。

 

『デッド・ドント・ダイ』
自粛明け初の映画館ということで。金曜の夕方ということもあって、観客は一桁。仙台か?
ジャームッシュがゾンビものを撮るということでまったく期待していませんでしたが、その通りでした。昼間の警察署内の明暗が絶品中の絶品てなくらいです。メタ的なゾンビたちというネタがめちゃめちゃベタな資本主義批判に決着するので、それすらもメタな何かでないと、どう受け取ったらいいものかさっぱりわからない。ストレートに受け取るべきと言うなら、間に合ってますの一言になってしまう。でもジャームッシュってこういう人だっけか、とも思うし。まあいいか。

 

『Fiction』

ブクガのベスト盤。フラゲ日にタワレコに駆けつけて棚になかったのを店員さんにバックヤードから出してもらって購入。アキバ店の店員さん、とても親切でした。
新曲と再録が目当てだったけど、通して聞けばまあ全部いい曲。サクライさんの天才はメロディメーカーぶりにあると個人的には思ってますが、どうなんでしょうか。
そんなに好きでなかった「Snow irony」の再録がとてもいい。ボーカルの技術力の問題なのか、原曲にない疾走感のようなものが加えられている印象です。新曲はいっしゅん戸惑ったけど、いい曲です。

 

上半期ベスト

映画もライヴも当然ないので、音楽を中心に。あと冬はけっこう小説を読んでいたのでそれも。新作も旧作も特に関係なく。

 

[音楽]
GEZAN『狂』
16FLIP vs SEEDA『Roots & Buds(ReMastered)』
踊ってばかりの国『光の中に』
mei ehara『Ampersands』
lyrical school『OK!!!!!』
RAY『Pink』
クマリデパート『サクラになっちゃうよ!』
Moment Joon『Passport & Garcon』
Terrace Martin『Impedance』
Tentenko『Deep & Moistures』シリーズなど
von.E『Rehearsal 3』

 

あと宇多田ヒカル「誰にも言わない」が圧倒的ベストソングでした。

 

[小説]

マルカム・ラウリー『火山の下』

サミュエル・ベケット『モロイ』

吉田健一『東京の昔』

松浦理英子『最愛の子ども』

横田創『落としもの』

横田創『丘の上の動物園』

山下澄人『壁抜けの谷』

阿部和重シンセミア

 

[配信]

lyrical school『REMORT FREE LIVE vol.1,2』
cero『Contemporary http Cruise』
NILKLY『AQBISION♯3 NILKLY 1周年記念スペシャル』ダンスパート