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JJFの話

前回お伝えの通り、福島県郡山市にて12年ぶりの東北開催となったJapan Juggling Festivalに参加してまいりました。初日は例年の通りチャンピオンシップの審査委員として、翌日と三日目は一般参加者として、エンジョイにエンジョイを重ねて刺激やら爆笑やらに囲まれた愉快な時間を過ごせました。

審査委員としての仕事は、他の審査委員の講評が後日会報にて掲載されますのでそちらに譲りまして(会員になってくださいませ)、そして会場内外の愉快な交流に、セッションはやはり魅力的で、とりわけ今年は楽しむことができたので思い出深いのですが、今回は二日目に行われたゲストステージについて、備忘の意味も兼ねてざっくり振り返ろうかなと思います。

今年のゲストステージは国内からくるくるシルクDXにドイツからAnni Küpper、アメリカ人ジャグラーTonny Pezzoの三組によるパフォーマンスです。

まずはくるくるシルクDXさんから。会場を演奏し練り歩きからのストンプ、ブレイクダンスに三人でのボール&バランスボールでのジャグリングルーティン、おたまやシェーカーカップ、皿回しならぬたらい回し、スティルトにピコハンパッシング...と書き出していると本当に盛り沢山ですね。。
マイム出身というバックボーン故か、道具は一般的なジャグラーのそれのように局所的なアクセスにとどまらず、頻繁に別の意味へ接続され、作品を駆動させます。たとえばシェーカーカップは四足歩行動物の蹄のようにも扱われ、鞭を鳴らす傍らサーカスの猛獣と見立て、同時に足元の不安定さも演出したり。


動画はメンバーのおひとり金井圭介さんの作品です。ここで棒はあたかも骨のように見立てられています。
ちなみに金井さんは海外でのジャグリング作品発表に先鞭をつけた日本人としても知られており、劇場公演で活躍しているながめくらしつにも影響を与えたとか。この動画ではとてもスタイリッシュですが、くるくるシルクDXでの金井さんはまあ煽る煽る、動く動く。さながらパーティーピーポーのごときはしゃぎぶりです。あまりおすすめするのもどうかと思いますが、観客のひとがアップロードした動画が幾つも見られます。


こちらはAnniのパフォーマンスの予告編。手をロープで束縛しての、クラブジャグリング。手を拘束することで操作のスリリングさが増すのはもちろんのことですが、体と道具の別の関係が拓かれます。単調に床を回転するクラブを避けるため仰向けの体を大きく持ち上げるなど、それそのものとしてはどうという動きでもありませんが、手を使わないというチャレンジングな主題に対して単焦点的に気を取られていては、こういう動きは現れません。難易度にのみ焦点化せず、複数の関係を拓くこと。ジャグリングの運動は、この複数性によって魅力的になり得るでしょう。
Anniのショーでは1-6本のクラブを扱いましたが、それぞれのシークエンスが成功する度チョコレートを食べる演出になっていました。表面的には「ご褒美」という見立てでしょうが、ユーモラスな演出はハードなテクニックとの対称性もさることながら、どこか舞台に"抜け感"というか風通しの良さがもたらされているようです。

ところで、ジャグリングと食(べる)はひとつの主題足りうるのでは、とかねがね思っています。このあたりのことは後日改めて考えてみたいですね。



トリはTony Pezzoでした。
舞台には下手から順に1〜8までの数字が大きく書かれた箱が並んでおり、箱の後ろから紙片の入ったネットとマジックハンドを取り出し、ネットの中に入った紙片を観客に選ばせ、出できた番号の書かれた箱に入っているネタを演じる、という塩梅。しっかり日本ならではのギャグパートもあったり、上の動画のようにかっちり構成したショーかな、と思いきやこちらもユーモアを含んだ作品で、いい意味で裏切られました。でもしかし、それぞれのルーティンはとんでもないレヴェルです。特に映像作品である"Water on Mars"でのリングルーティンの再現は凄まじいものです。
また、オリジナルと思われるネットとボールを使ったルーティンでは、その道具でできるパターンをもはや汲み尽くしたかのように感じるボキャブラリの豊富さ。彼のなんという勤勉さでしょうか。


今やジャグリングはウェブ上の映像によって見られる機会が一番、ということもしばしばであり、私とてその一人です。とはいえ、月並みではあっても、ライヴによる経験はまったく別様です。それは善し悪しの問題ではないという立場ですが、今まで映像で見ていた技が、目の前で見ると全く違う感覚をもたらすことも珍しくありません。この感覚の差は新鮮であり、このような経験の更新が、また次のジャグリングへと促します。端的に言って、もっとジャグリングがしたいと思わされるのは、圧倒的にライヴです。たぶん、ジャグリングをやっていない人がみても、ジャグリングではないなにか別の行為に差し向けられるような、そうした健康な反応が、ライヴには宿ります。見る者としても、見せる者としても、この感覚は信じるに値すると思っています。


・・・しかし、JJF最終日を早く抜けてまで赴いた山形国際ドキュメンタリー映画祭でようやく観ることができた三宅唱監督『The Cockpit』は、カメラという記録装置を駆使して、そのライヴ性を再び組織化しているようです。そんなことより願わくばもう一度見たい! 足を踏み鳴らして、歓声を上げたくなる瞬間が幾度もありました。
今こちらについて話すわけにはいかないので、別に雑談的に書くかも。。


えーと、そういったわけで、三連休を大変楽しく過ごしました、という話でした!






あ、最後にひとつだけ。


「PONTE」というジャグリングの雑誌です。
一般の方が手に取れる形のジャグリング雑誌はこれが初めてでしょう。買う時期を逸していたのを、会場でようやく買えました。いやいや、とてもおもしろいです。
インタビューにエッセイ、紀行文と、雑誌としてはごくあたりまえのことかもしれませんが、ジャグリングにあっては、そんなあたりまえがようやく形になったのです。
発刊は既に10号を数え、読み応えもどんどん増しているとのこと。バックナンバーも届くのが楽しみです。

ご興味のある方はぜひぜひこちらからご注文をどうぞ!