ジャグリングを見る その2 (JJF後談)

先日の記事に書きました通り、昨日までの三連休は静岡県三島市でJapan Juggling Festivalに参加してまいりました。
初日は日射しもきつく、何百名というジャグラーがぎゅう詰めになった体育館は風が入っても暑く、いや暑苦しく、あまり消耗しないよう、久しぶりの再会の挨拶を重ねるに終始した一日でした。

そんなことはともかく、初日といえば、先述した記事にも書いたチャンピオンシップが行われる大事な日です。大会の行方を見守る多くの参加者も体育館でどことなく落ち着きがないようにもみえました。

今年のJJFチャンピオンシップはチーム部門に4組、女子個人部門に4名、男子個人部門に9名の計17組が決勝の舞台へと進み、それぞれがこの日のために練り上げたルーティンとテクニックとを披露しました。出場者の多くは現役の大学生で、ジャグリングを始めて数年といった、キャリアの浅い出場者も少なくありません。が、そのテクニックはプロをも凌ぐものばかりで、むしろアマチュアだからこそ徹底できる、ときにマニアックなテクニックの追求は、ごくごく一般の方々を楽しませるサーヴィスこそなくとも(それゆえの問題もなくはないのですが)、ジャグリング愛好家を興奮させるに十二分なものです。

さあさあ、なんと今年はそのチャンピオンシップの優勝者の映像が早くもYoutubeにアップロードされています。大道芸でも定番の、デビルスティックによる演技です。


優勝は隈本哲人さん!

もしかしたらジャグリングについての知見を持たない方ご覧になれば、ミスの回数が多いことに、優勝の結果を訝しがる向きもあるかもしれません。確かに決して少ないとはいえないのですが、近年はリスクを冒して高難度の技を仕掛ける傾向にあり、全体として6分の演技時間に5〜15回のミスを冒してしまうことが多いようです。ここは議論のあるところで、性急に結論づける訳にはいきません。
しかし、哲人さんの場合は、しかし、と強く強く前置きしなければなりません。そもそも今までのオーソドックスなデビルスティックのパフォーマンスは、ハンドスティックと呼ばれる、両手に持つ短い棒の回りを、センタースティックと呼ばれる長い棒がぐるぐると回転するその名も「プロペラ」系の技が主たるものであったのですが、彼においては、センタースティックの回転は任意のタイミングでキャンセルされ、空中でぴたりと止まるような動きが多く目立ちます。

ちなみにこれが「プロペラ」。小さい男の子がやり方を教えてくれます。

今までのデビルスティックがとめどなく回転し続けることによってジャグリングの運動感を演出していたのに対し、哲人さんのデビルスティックは、その回転をあえて止め、変則的なリズムを生むことで観客が予測できない運動を次々にもたらすことで快感を与えることに独創性があります。
もちろんそればかりではなく、1:30地点で行われている動きはいわゆる「プロペラ」系の動きですが、手の動きがかなり特殊で、類を見ない(わたしはデビルスティックについて不案内なので、もしかしたら先例があるかもしれません。ご指摘あればお願いします。)ダイナミックなものです。
センタースティックが2本に増えると、この「プロペラ」は、それがルーティンであればほぼ必須の条件になるのですが、哲人さんは二つのハンドスティックの間をセンタースティックが往復する高難度の「アイドリング」(すこしややこしいのてすがセンタースティックが1本だと「アイドリング」は基本形なのですが、2本になると「プロペラ」が基本形になり、難易度は段違いに高くなるようです。)に終始した技の選択で、これも世界にそう例がないスタイルです。
つまり、哲人さんの演技はミスこそ少なくないものの、「デビルスティック」という道具に対して今まで考えもしなかった角度から光を当て、誰も気付かなかった魅力を付け加えることに成功したのです。
日本のジャグリングではこうした、道具に対して突出したアプローチを試みるパフォーマーが多く、世界中のジャグラーから広く注目を集めています。


他の出場者についても色々と話は尽きないのですが、変わり種を一つだけご紹介。


なんと客席の様子。


これは出場者の宮野玲さんの演出で、舞台中央にカメラを客席に向けて据え、パフォーマンスを行った際の映像です。肝心の演技が見られないのは残念ですが(予選動画は宮野さんのチャンネルから見られます。)、生々しい観客のリアクションが見られる珍しい映像でしょう。

近頃は出場者が自身の映像をYoutubeに投稿するケースが増えているため、ご興味のある方はぜひ「JJF 2013」や「Japan Juggling Festival 2013」などのキーワードで逐一検索してみて下さい。多様なジャグリングの世界が垣間見えます。