新年おめでとうございます

遅ればせながら新年おめでとうございます。
今年もパフォーマンス活動に企画やWS等で活動してまいります。どうぞよろしくお願いします。

 

 

と、ご挨拶もそこそこに時間を昨年まで戻します。

昨年は、かなり意識的にライヴへの参加を増やそうとしていた年でした。わたしのパフォーマンスは音楽へのこだわり(あまりポジティヴな意味ではありません)があり、とはいえライヴ経験が多かったかというとそうでもなかったことを省みて、ハイレヴェルな演奏を聴けるブルーノートなどにもどんどん通ってみよう、という算段でしたが。。



時々の雑談めいた話で触れているように、昨年はいわゆる"地下アイドル"と言われる、ライヴハウスを活動のメインにおいているアイドルのライヴを見ることが圧倒的に多くなっていました。BABYMETAL以来、なんとなく潮目が変わったのだろうという予感と友人たちの行動を頼りに、できるだけシーンの広さを探ってみようと思ったのが、沼。ここまで面白いシーンだとは全く想像できていなかったのが本当です。

新年に入ったものの、まずはこの私的なまとめをやっておきたいなという次第。昨年個人的に面白いと思ったグループのごく一部を紹介の形で。長くなりますが、どうぞ。

 

 



まずは地下のシーンへ開眼させられるきっかけになった「ヤなことそっとミュート」。


特徴的なグループ名の由来は、公式サイトによれば「ヤなことだらけの日常をそっとミュートしても何も解決しないんだけど、とりあえずロックサウンドに切ないメロディーを乗せて歌ってみる事にする。」とあり、ともすればありがちな、内省的な少女たちの葛藤を思わせるのですが、ご覧の通り、パフォーマンスは、観客へ訴えかけるエネルギッシュな強さを持っています。

また、"地下"という響きから想像される運営上の粗雑さ(これは残念ながらイメージ通りであることもしばしば)は"ヤナミュー"に限ってはMVを含む広報物、サウンドエンジニアでもあるプロデューサーの慎秀範氏が作るサウンドも、およそ"地下"のクオリティではありません。

ヤナミューのライヴは、とにかく手抜き知らずという印象で、体力を使い切る意味での全力感とは少し違い、尻上がりに熱っぽくなるフロアへに応えることにおいて、全力であるという感触があります。分かりやすいサービスではなく、観客の期待や熱狂というプレッシャーを受け止め飲み込むような...自身に酔うことなくエモーショナルなさまには、いつも感動させられます。そのパフォーマンスは、荒削りであることを超えて遥かに魅力的です。

 

ステージのパフォーマンスでエモーショナルであることにおいて、今"アイドル"と呼ばれるジャンルで活動しているパフォーマーたち以上に優れたパフォーマーはそう多くはないのではないでしょうか。 

amiinAはそう多くライヴを見れていませんが、大阪でのフェス出演で演じられたこの曲の素晴らしさは昨年最も印象深いパフォーマンスの一つです。
アイドルにおける「若さ」の商品化は批判もあり、一面的に語るべきではありませんが、この曲で二人が目を合わせ手を取る瞬間に溢れるのは「若」いパフォーマーならではのエモーション、輝きである気がします。

 

 

多様化するジャンルやコンセプトの複雑化に伴い、いま、「アイドル」は自分たちの活動に自覚的でなければなりません。 その自覚において最も先鋭的なグループが「・・・・・・・・・」です。正式名称も存在せず、メンバーは目を隠し(これが素顔という設定ではあります)、やはりそれぞれに名前はなく「・ちゃん」と呼ばれる。
なぜそのような活動形態なのか、ここで説明しだすとひどく長くなりますので、ご興味があれば公式サイトやヲタク(ファン)の方々のブログなどをどうぞ。



ひとまず私が触れておきたいのは彼女たちのパフォーマンスの無類の楽しさです。こんなに楽しいグループは他にそういません。
例えばこのSajjanuというバンドによる変拍子のインスト曲に振り付けられたダンスは、奇矯さではなく"いわゆる"アイドルとしての振付であることをストレートに打ち出しつつ、絶妙なタイミングで挿入されるスキャットともつかない掛け声(?)がドライヴ感を増していきます。ダンストラックでは初音ミクやMasaccreと幅広いカバーを試みつつ、オリジナル曲ではシューゲイザーやドリーム・ポップと呼ばれるジャンルを軸にパフォーマンスしていますが、このオリジナル曲も魅力的で、今月には1stアルバムがリリースされます。その名も「         」(半角スペースが9個)。
ついこの前、先行フリーダウンロードがあり、年末はこのアルバムしか聴かなかったくらいお気に入りです。

www.trash-up.com

(どうでもいいですがサイトをスクロールすると出てくる言葉の中に「ジャグラー」が出てきますね。パチンコの方?)

 

 

 
地下アイドルのファンコミュニティでは、なかば自虐的に"楽曲派"という呼称があり(本来アイドルの可愛さ・頑張りや成長などを楽しむところ、楽曲のクオリティを免罪符に、やや斜に構えてアイドルを楽しんでいる人たち。くらいのニュアンスでしょうか)、言うなれば私もどちらかと言えばそのような一派に属することになりますが、ごくごく単純に言って、アイドルの曲は幅広く、楽しいものばかりです。上に挙げたグループの曲からしても、粗製濫造の誹りを受けるアイドルポップス(もちろん偏見でしかありません)とは到底呼び得ないものでしょう。
スティーヴ・ライヒからの影響を公言し"現音ポップス"を標榜するサクライケンタプロデュースの「Maison book girl」については以前も簡単に紹介しました。

 

このグループは音楽性のみならず、年末に行われた4thワンマンはメンバーの言葉を借りれば「大グセ祭り」というほど、"ブクガ"が一筋縄ではいかないアイドルグループであることを示唆した仕掛けを、多数織り込んだ広い意味で演劇的なライヴでした。
アイドルは大衆芸能であると共に、プロデューサーを中心としたクリエイティブチームの"作家性"とでも呼ぶべきものが自由に発露する場にもなっています。

ここで例えば妹分グループである「クマリデパート」から両者の共通点や差異を見ていくと、サクライさんの作家性が見えてきそうです。

 

アイドルカルチャーに親しむと、知り合った方々から挨拶代わりに「推しは?」と訊かれるのが常で、どうにも「推し」文化にはしっくり来ないまま「箱推しです」(グループ全体が好きなこと)とお茶を濁すくらいでしたが、これも先日少し触れたようにわたくしの「推し」はMaison book girlの矢川葵さんです。なにが良い映像かなと探しましたけれど、イレギュラーなライヴながら、その気迫と集中力が映像越しにも垣間見えるバンドセットの映像を。語りだしたら別エントリを必要としてしまいますので、まあとりあえず。

 

 

 

そして、実はここでも何度も触れようとしてできなかった2つのグループの紹介を。

 

凶暴な音と惜しみなく振り絞るようなパフォーマンスで異様ともいえるステージを作り出しているサイケデリックトランス・アイドル「MIGMA SHELTER」です。
最も新人で2ヶ月、このグループに参加してからステージに立ち始めたメンバーで8ヶ月という、普通であれば右も左もまだまだわからないはずの素人が、ここまでになってしまうというディレクター田中紘治の演出力には、危うさを含みながらも抗い難く惹きつけられてしまいます。

 

そして同じく田中ディレクターの手による「There There Theres」。今までは一曲ずつ張り付けていましたが、このライヴに関しては通して見ていただきたい。
一曲目の「メタリクス」からして、地響きするほど太く重いベースラインも無頓着に体育座りからスッと立ち上がってはまた座り、たどたどしくも耳に残る英語詞を歌うオープニングに、我々が知っていた「アイドル」とは全く別の何かを見せられている確信を抱かせ、その後のステージに漂う陰鬱さと形容しがたい熱、とてつもなく感情的なコールを叫び返すフロアの有り様に、単純に開放的なのではなく、それぞれの抑圧をこじあけるようなエモーショナルさを感じて言葉を失ってしまいます。
このセットリストは通称「イン・ザ・ダーク」と呼ばれるあえての暗い曲でまとめられたライヴで、むしろ全アイドル中もっとも多様なジャンルを飲み込んだグループでもあるだけに、セットリストの変化で見せられる表情の多彩さも大きな魅力です。



今でもこの二組についてはどう語ることができるのか、黙るか/無際限に語りを続けてしまうかの二択から逸れて適切に過不足なく語れるのか、ちょっと分からないままで、ことのインパクトを他の人にも知っていただきたい!と思いつつ半年以上過ぎてしまいました。そうこうしているうちに、年末には外部の人にほとんど説明不可能な衝撃をもたらした新メンバー加入があったり、界隈は騒然とした状態でもあったのですが、今年も引き続き活動をチェックします。

そして実は、2つのグループには前身となる「BELLRING少女ハート」というグループがあり、この説明を経ないと重大な片手落ちになってはしまうのですが、(そもそもアイドルはコンテクストを理解しないとその面白みを取りこぼしてしまう事が多い)、敢えて乱暴に情報を捨てて、映像越しに見えるステージのインパクトだけ見ていただきたいです。「BELLRING少女ハート」について気になった方はこちらの記事を。

  

いま少し書いたように、アイドルはハイコンテクストな芸能であると言われており、そのグループやシーンについての理解が深まるほど面白くなるジャンルです。ですので、ざっくりした紹介は一面的にならなざるを得なく、またそのようなコンテクストの理解に伴って「アイドルのコード」らしきものが飲み込めるようになってくる。
これは何が言いたいのかというと、彼女たちの一般的な意味で共有されている歌唱・ダンスのスキルの低さについての受け止め方です。曖昧な言い方ですが、スキルの低さは問題にならないと同時に問題でもある。スキルが低いからと言って見るに値しないかといえばそんなこともなく、むしろ私が学ぶことすら多い。しかしスキルが低い"からこそ"良いわけではない。スキルは身についていくし、高いに越したことはない。プロに及ばないスキルだからといって看過されるわけでもない。ただ、我々にそのスキルの発露の仕方を読むのに一定のリテラシー、「アイドルのコード」が必要とされるだけです。
そのコードは、狭義には南沙織を起点とするアイドル史の積み重ねと、広義には、ひろく人間が人間に感じる魅力の様々が形式化したものとの、混合物です。ローコンテクストに享受できるスキルフルなエンターテインメントとの単純な比較には意味がありません。というか、よくスキルの巧拙の問題で比較されもするK-POPだって、観客のコールの熱さなどの、雑多に見える要素抜きで見たって、やはり片手落ちだと思っています。ステージパフォーマンスやパッケージされた楽曲作品に視野を限定するのは、相対的に可変するひとつの方法でしかありません。

 

と、まあ、一旦はここまで。
こんな程度の記事でも、自分でも不思議なくらい、アイドルについて書くのは難しいです。だけどそろそろ切り出しておかないとなあという気持ちも長らくあり、ようやくという感じです。

 

 

最後に、今月27日(土)の「HOGONOEXPO ~Live! Special~」にご出演いただく3776さんをご紹介するのが自然な流れなんですが、実は3776さんはアイドルのハイコンテクスト性でいうとなかなかに複雑なほうだと思っていて、もちろんそのまま虚心に眺めても井出ちよのさんの魅力も楽曲の素晴らしさも伝わりはするのですが...これは別記事で。

まずは宣伝だ!!

 

「HOGONOEXPO~Live! Special~」

日時 : 1月27日(土) 開場17:30 開演18:00
会場 : 仙台市市民活動サポートセンター 地階 市民活動シアター(http://sapo-sen.jp/access/
入場料 : 予約2000円 当日2500円
出演者 : 石川浩司・チャタ・3776・燃えるゴミ・結城敬介
予約フォーム : https://goo.gl/forms/pRQiUhHQBCsbfL153


各出演者のご紹介ははこちら。