20191208 2019年のベスト...アルバムと映画とステージ

毎年恒例のやつです。

 

年末になるとバタバタしそうなので、一息ついているこのタイミングで...
音楽と映画とステージから。音楽は全然ひっくり返りそうなんですが、まあいいとして。

 

 

音楽

基本的にアルバム単位で。いつもはランク付けをしないけれども、音楽だけこころみに。
それぞれの作品が「優れているかどうか」は、聴取経験のなかで半ば無責任に判断される程度で、胸を張って証拠らしきものを提出できるわけでもなく、好みの10枚というだけです。くり返し聴いたか否かだけでなく、そのミュージシャンとの距離の近さみたいなものが順位に反映されており、要するにお遊びです。

 

 

10位 Fuck Yo Feelings / Robert Glasper 

 

9位  CIRCUS CIRCUS / ゆるふわギャング&Ryan Hemsworth

 

8位 燦々 / カネコアヤノ

 

7位 新しい人 / OGRE YOU ASSHOLE 

 

6位 調べる相対性理論 / 相対性理論

 

5位 Crush / Floating Points

 

4位 Cherish / KIRINJI

 

3位 METAL GALAXY / BABYMETAL

 

2位 歳時記 / 3776

 

1位 mint exorcist / FINAL SPANK HAPPY

 

 

日本の音楽ばかり聴いていて、自分でも驚きなのですが、これは海外より日本の音楽のほうがおもしろい、などということではありません。単に受動的な態度で音楽を聴いていたら、こうなったという偏りの表れ。ではあるけど、こんなに日本の音楽が楽しいのはいつ以来でしょうか。個人的な思い入れも多いに込みでほんとうに感動的なベビメタの3rdアルバムについてや、ライヴを中心に感想を書いた3776のアルバムなど、また今年最高の歌「killer tune kills me」を聴かせてくれたKIRINJIの超超すばらしい新作を超えて、先日ふれたようにFINAL SPANK HAPPYのアルバムが圧倒的に今年1番です。"刺さる"とはこのことで、サウンド面やアレンジはもちろん気に入りつつも、プロジェクトとしての魅力...すなわちおふざけを交えながらベタにメロウなコンセプトが、たぶん今の自分に最も必要な、ある意味で出自を再確認させられるような効果がありました。

『mint exorcist』はどの曲も素晴らしく、頭から終わりまで聴き通すことがベストな聴取体験ですが、個人的に参って参って仕方ないのは「tO→Kio」です。"銀座の街に革命が起こったらどのブランドを着て戦うかな" "このサロンの中であたし撃たれたらどのマカロンの血が流れるかな"と、きわめてスロウに、反時代的なまでの贅沢を歌い、それが革命と重ね合わせられることに、まさか呑気さはないものの、やはり贅沢さに与することの政治性...というまでもなく、市民としての、そして芸術家としての矜持を受け取ってしまいます。

もう少しここにこだわってあと一点指摘しておくなら、銀座の街の革命と、サロンで撃たれてしまうシーンが極めて映画的に想起されつつもも、"どのマカロンの血が流れるかな"というフレーズに見られる詩的な結合は、映像的な想像を脱臼させて、その軽薄さと死を妄想する官能が、これ以上なく魅力的に機能しているパンチラインでしょう。また、オリジナルのけものver.ではこの歌詞はなく、新たに付け加えられたことをとてもうれしく思います。つい先日、うっかり銀座でこの曲が流れ出した陶酔感と言ったら...!

 

サブスクの力に加え、ハイレゾのストリーミングサービスにまで手を伸ばして、ますます音楽が身近になりつつあるいま、10枚に収まらなかった作品もタイトルだけ。

 

Dystopia Romance 4.0 / Have a Nice Day!
JESUS IS KING / Kanye West
ADVISORY / KANDYTOWN
Blood / Kelsey Lu
amo / Bring Me The Horizon
Fever / Meagan Thee Stallion
Moonlight Tokyo / カイ
Points / ・・・・・・・・・
 
昨日配信開始のこちらもおまけ。すっばらしい。
空耳かもしれない / SAKA - SAMA
 
 
映画
 
今年は転居した地の利で、どれだけ映画館へ通うことになるかと思えば、さっぱりでした...ユーロはおろか、ヴェーラは一度も行かなかった。フィルムセンターもしかり...したがって、選んだものはほぼすでに記事にしたものばかりですが。備忘的にタイトルから当該記事に飛ぶようにしています。
 
 

 
さらば愛しきアウトロー / デヴィッド・ロウリー

 

 
ここ数年のうち、鈴木卓爾さんの『嵐電』に優る映画は、世界中見渡した上で、何本見つかるでしょう。物語に奉仕されるショットと「京都」という磁場に寄り添うショットは火花を散らすように衝突しあい、時空間を歪ませ、ときに異様なフレームを析出します。妖怪が出てくるのも無理はない。
3776さんの方法について、アイドルというジャンルのストレステストを試みているようだ、という趣旨のことを書きましたが、『嵐電』にもまた、似たような手触りを感じます。映画は、こんなように引っ張っても叩いても、映画のかたちを保ったまま、我々にとって謎を残して、魅惑し続ける。
同時に、『さらば愛しきアウトロー』の、『嵐電』に比べればいくらか素朴に映画を信じている姿に、ボロボロと泣いてしまったり。きわめて品のいいサウンドトラック。ケイシー・アフレックのカサカサと紙をクシャクシャにしたような声。レッドフォードのカーチェイス、微笑みと苦悶それぞれの表情。朝焼けを丘の上から望む馬上のレッドフォードと、彼を追うパトカーのランプ。そしてラスト間際にインサートされるシーンの軽やかさ。何をとっても手放しに素晴らしい。
 
 
そう、たとえば映画というフィクションの形式に対する"信"の問題があるとするとき、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、きわめて違和感やしこりの残る作品で、もう一度くらい映画館に観に行きたかったのですが...フィクションの優位性を高らかにかかげる程度の作品ではないと思うのだが...こう考えつつも日々に流されてしまい、つくづく粘り強さの必要を感じます。
 
 
などと妙な反省をして最後。
 
 
ステージ
 

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音響や演奏の素晴らしさが、単なる高揚感に結びつくわけではない経験を与えられ、いまだに消化しきれないパフォーマンスです。芸となれば、どこに力点があるか、さすがに自ずと肌感覚的にはつかめてしまうのが大概ですが、坂本さんのステージは、どこに力がかかっているか非常に捉えづらく、安易な連想を許してもらうなら、古武術の技をかけられているかのようです。しかし、古武術のようなミニマムさとは相反するようにゴージャスでもあるから、ことは余計にややこしい。音楽はすべて、私にとって基本的には快楽ですが、これが快楽だとしたら、そうとうに奇妙かつ微妙な味わいを感じ分けるツボを拓いていく必要があるでしょう。そうした経験をもたらすパフォーマンスに、あと何度出会えることでしょう...凄すぎました。
 
 
盆と正月が一緒に来るよ! 〜歳時記・完結編〜 / 3776 (WWW)

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モノづくりの人として、圧倒的なステージの違いを感じさせてくれる石田さんには、もう尊敬の念しかありません。正統ながら正統にすぎるあまり狂っているように見えてしまう、「アイドル」というジャンルの、そして「3776」というプロジェクトへの律儀にすぎるアンサー...来年2月29日のワンマンも注目しています。
 
 
BABYMETAL WORLD TOUR IN JAPAN -DAY1- / BABYMETAL (さいたまスーパーアリーナ)

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たいへん暖かな気持ちにさせられた(笑) というくらいで、実は言いたいことは少ないのでした。興奮よりも、落ち着けるような気分になってきたし、なによりニコニコと笑うSU-METALが見られるのは、眼福というやつです。終演後に友人たちとどうでもいい話が出来る場としても、とてもいい時間を過ごせました。
 
 
入船亭扇辰  /   鈴本演芸場7月中席 夜の部 7月17日「麻のれん」渋谷らくご 1月14日 「明烏
 
これもちらっと書いていましたが、今年ははじめて落語会に何度か足を運んで、映像でも過去の名人の噺を見始めた年でした。春風亭一之輔さんや古今亭志ん輔さんの芸も印象深いけれど、入船亭扇辰さんのエレガンスさにすべてを譲ります。有名なシーンとは知らずに見たとはいえ、「明烏」の、一夜明けたあとに甘納豆を食べるシーンのなんともいえない良さ... 「麻のれん」も、なにがあるというわけでもない噺で、それはそれは私好みでございました。
 
落語はちょっと早いうちに落ち着いてしまったのですが、金原亭馬生「笠碁」に出会ってしまったのも大きいかもしれません。
そしてアイドルではNILKLYが印象強いものの、決定的なこれぞというステージはまだなく、強度の問題というより、かける期待の問題です。MIGMA SHELTERなんかも、超やばいことになってますし、相変わらず楽しませてもらっています。
 
 
 
 
本は新刊というくくりで意識してないことも多いので、割愛。強いて言うなら上半期にも挙げた三浦哲哉『食べたくなる本』と、平倉圭『かたちは思考する』でしょうか。
 
 
 
 
音楽は、Apple MusicのReplay'19の教えるところによれば227枚のアルバムをチェック。配信のないものを含めても250枚前後でしょう。個人的な記録で、映画は45本。ステージは47本。とのこと。映画は少ないっすねえ。もうこんな調子が何年も続いているのだから、これが平均なのだが。
 
 
 
 と、こんな調子でございました。
こうして書き出すと、自分がいま何に惹かれ、何を受け取ったのか、いくらかクリアーになるような気がします。そして'10年代のしめくくりということで、それに準じた遊びもチラホラ見受けられ、この10年がなんだったのか、作品を介してまとめるのも楽しそうです。映画だけやろうかなあ。