lyrical school REMOTE FREE LIVE vol.3について

※7/31 敬称の統一等加筆修正

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は〜!痺れた!最高最高最高!!!!!

 

むちゃくちゃによかったリリスク3回目の配信の出だしは、前2回と同じ縦画面5分割のフレーム・イン・フレーム形式だけど、リモート収録のように見えて、こりゃ「いるな」という空気が濃厚に漂っていました。その勘ぐりはあっという間に答え合わせ。1曲目の「OK!」の「縛られ続けてたら死んじゃう!」というシャウトがアイロニカルにも響いていた1回目の配信に対し、今回はまさしくその「縛られ」を解くようにして、それぞれのフレームに5人が入り乱れていく。

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lyrical school REMOTE FREE LIVE vol.3」 02:58のスクショ

1回目の「OK!」が「大丈夫だよ!」という知らせと励ましに響くなら、今回の「OK!」は「もういいだろ!」とレギュレーションを"越境"していくかのようです。

 

事実そうした開放感は新曲「YABAINATSU」の衒いないパーティーチューンに連絡されます。hinakoさんがタオルを振り回しながらラップする「ふたりなんか企んでる/脱ぎ捨てたビーチサンダル/はしゃぎすぎるLike a サマーヌード/ヤバすぎるヤバダバドゥー」というラインの駄々っ子のような無二のフロウには、ひとつの影もありません。

 

続くセルフボースト・トラップ「HOMETENOBIRU」。しかしロゴデザインの芸の細かさ。OとEとNがびよびよに伸びている。「伸びる=上達する/出世する」ことだけでなく「ゆるさ」も含意されています。攻撃的なサウンドとリリックはこうしたユーモアにも支えられているし、マジとネタの塩梅の良さを加減しています。

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lyrical school REMOTE FREE LIVE vol.3 06:50付近のスクショ

 

一転、ゆるいBPMになり「Dance The Night Away feat. Kick a Show」のKicK a Showさんとの共演が終われば、間断なく新曲「Summer Trip」のロゴ。minanさんから「これが最後の曲だけど」とアナウンス。14分に満たないタイミングで締めくくりが告げられる、この切り上げの潔さ。か〜〜!粋の一言!この態度はあまりにシャレてて、本当に感激してしまう。

 

それにしても、"今"聴くにはあまりにもパンチラインだらけの「Summer Trip」のリリックのふしぎさを、どういったものかわかりません。5人がステージセンターに寄り合って、画面の向こうにいる我々に向けて問いかけているように見せる「そっちはどう?」のメッセージだけでなく、「戻れなくなろうよ、このサマーに」というリフレインの奇妙さ。私たちが入り込んでしまった世界の取り返しのつかなさを思うと、このあまりにも甘い誘いかけは–––おそらく本人たちは少しも意識していないからこそ–––どこか彼岸からの声のようにすら聴こえます。5人の歌に、ここではない"別の世界"の可能性に思いを馳せてしまうことは避けられず、しかしそれが不可能でしかない諦念に、私たちとアイドルの間にある、埋めがたい絶対的な距離が浮かび上がるかのようです。ただその距離には、少なくとも私には、もどかしさでなく、むしろ何かを回復しているようにすら感じられます。ここではないどこかへと縛られから放たれて歌い踊る誰かを見て、ここにいる私たちが活き活きとしてしまうこと、それは芸能の本懐ではないでしょうか。

 

 

それにしても、こんなにも時局を写したかのような歌詞をもったトラックが、昨年リリースされたアルバムに入る予定だったという、偶然のすごさ。

 

 

リリスクは、いい曲・配信技術の質・気の利いたビジュアルデザインといったクオリティに安心させるだけでなく、状況をフィクショナルに読み替えていくような、曰く言いがたい物語的な手触りも受け取れる配信シリーズを見せてくれました。息苦しさもなければ、やけくそでもなく、ひとつひとつ芯を捉えていった仕事。こうしたことが、世界のどこかでも同じように起きていたのかもしれないけれど、まずは、リリスクが...成し遂げたというのも野暮ったい、ただただ「アイドル」の仕事を見せてくれたことを、ここに筆圧も強く書き残しておきます。