ハマることと抜けること そしてK-POP男性アイドルたち

たとえばいわゆる「アニメ声」に苦手意識や偏見があるとして、その障壁に阻まれてアニメが見られないとする。

けれども、話題になってるだとか、信頼の置ける筋が評価してるだとか、そうした理由でともかく...「まどマギ」なり「ユーフォ」なり「よりもい」なり、まあいったん見ていったとする。面白くて、あるいはピンとこなくても、見続けてみる。

すると、しばしばいつの間にか、苦手だった「アニメ声」が気にならなくなっていることがある。どころか、長ずれば、定型の焼き増しにしか思えなかった声優の演技の微細なニュアンスが掴めるようにさえなってくる。それで結局はアニメが見られるようになっている。

 

たとえ話にしたものの、これは他ならない自分自身の話で、いっときはアニメを集中的によく見ていた。
文化的に偏見がありながら、飛び込んでみればそれを改めることができた大きな経験のひとつである。

 

アイドルでも苦手なことや、偏見すらたくさんあったけれど、おやすみホログラムが好きになったあたりで–––当時のふたりは青髪と赤髪だった–––見慣れなくて抵抗があった原色系の髪色がどうでもいいものになったのに気づいた。今はそうした強い発色の髪色、あるいは微妙な染色の具合が、アイドル当人との意外なマリアージュを作るのを感嘆しもする。

 

何かに"ハマる"というのはハマる以前の偏見をもった体から"抜ける"ことでもある。

 

とはいえ偏見から抜けきることもない。
アイドルの話をした直後だけど、こうした偏見、もう少しライトに言って、いまだ関心の持ちづらいのが、男性アイドルでもある。

ジャニーズであれば、世代的にもSMAPのゴージャスさは今も変わらず特別であるし(はっきり言って、お家騒動のあとSMAPに番組で頭を下げさせたフジテレビおよびジャニーズ事務所は、日本の醜悪さを強く推し進めたとすら思っている。絶対にやってはいけないことだった)、嵐の曲や、タレントとして好きなメンバーもいるのだが、LDH(狭義にはアイドルではないだろうが)はまったく良さが掴みきれない*1し、「メン地下」に至ってはいまだに無知と無関心を貫いている。
男性アイドルはなんだかそこまでピンとこない、というのが正直なところである。別にピンとこないならこないでよさそうだけど、性別を限らない「アイドル」にも関わらず、自分が積極的に見ているのは女性アイドルのみ。これがちょっと気になっていた。

自分も結局は性愛の対象であるところの女性アイドルでないと、強い興味は持てないのだろうかと、長らく微妙なしこりがあった。言明しておくと、私にとって、意識的には、アイドルは性愛の対象ではない。むしろそうした性愛を否認している。
しかし、「推し」と呼べるようなアイドルに関しては、否認された性愛がねじれて現れていると思うし、そこまで否認してしまうと、何かおかしいとすら感じる。
かといって、結局はかわいいから好き、女の子が好きなんでしょ、という雑な話は全然ノれない。そう思ってる人は、そう思う自分のファンタジーを、なぜかアルコールのようにして共有したがるが。

 

で、結論から言ってしまえば、さいきんのK-POP渉猟の結果、難なく男性アイドルグループもベタに関心を持つことができるようになった。あっけないものだった。
そして、やはりというか何というか、最初に偏見を解いてくれるのは制作物=音楽/ダンスへの興味だったりする。思えば女性アイドルにしたって最初はそうだった。
あとは出会うタイミングと、出会ったあとに経験する量。言ってしまえばなんてことない話だけど、それが起きるまではもやもやするものである。

と、ここで終わればめでたしめでたしでいいのだが、混ぜっ返す。

ちょっと横よりするが、たしか國分功一郎ネトウヨを指して、めちゃくちゃ勉強して色んなことに詳しいのに、一向に認識が改まらない人たち、と話していたのを思い出す。とはいえ、昨今の陰謀論ばやりにしても、世界の見方が変わるということにおいては、当人たちの新鮮さはいかばかりだったかと思う。ネトウヨにしても陰謀論にしても、そうした自己のパラダイムシフトの新鮮さに酔い続けているのかもしれない。
個人的には、ネトウヨ陰謀論には、社会的に是正すべき点が多々あるにせよ、個別の、パーソナルでデリケートな問題が横たわっているとも思っている。また、私が見る限り、國分功一郎はそうした心性を持つ人間のパーソナリティに早いうちから具体的に向き合っていた人だ。

話を戻すと、自分にとって男性アイドルをベタに面白がれるようになったことは、性愛的な興味の限界を越えたという点で偏見を脱したのかもしれないが、それで性愛の対象が積極的に増えたわけでもなく、相変わらず女性アイドルには性愛的な否認があり、男性アイドルにもある。むしろ、男性同士がにこやかにボディタッチしてる様子を見ると、微笑ましさもありつつお腹いっぱいだなと思ったりもする。森茉莉の同性愛が主題の小説でも似たような感覚になったことを思い出したりする。それは、紛れもなく同性愛嫌悪の類だろう。
他方で、男女どちらに対しても見目麗しさへの関心は温存されている。ただし、それを即座にフェミニズムの成果あるいは常識に還元して解消する気もないが、わざわざ公言したり、無邪気に称揚したりする気もない。アイドルの形式において男性アイドルの表現をふつうに楽しめるようになったのはいいけど、実際、何が変わったのか分かったものでない。
いつかアイドルの割り切れなさ、スリリングさと遊んでるうちに、大きく何かを誤っていたとしっぺ返しがあるのかもしれない。それは知れば知るほど、彼の国のアイドル文化にも危うさがありふれているからではある。

それでも、アイドルが面白いと思うことをやめられないし、彼ら彼女らが広げてきた独自の領野があることは、誰にも否定できないはずだと信じている。

 

 

 

 

以下からは単に、知ってる人からすればひとつの新味もない、何それがよかったという話である。

 

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ITZYからのTWICEからのStray Kidsで、J.Y.Parkの掌のうえで遊んでいる気がしてくるが。スキズはとにかくすばらしい。

 

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前々回でも書いたリレーダンス動画があいかわらず好きで、なかでも、いや、これはすごい......陥落とはこのこと。過不足ない遊び心と、炸裂する笑顔の連鎖。笑顔って、こんなに人を惹きつけるのかと、それこそ何度もオタク三日目を繰り返し続けるような典型的な感想だけど、人を永遠の三日目に押し返すものこそがアイドルだ。

 

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MONSTA Xにはジョホンがいる。

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スキズたちとは対照的な、端的に「男性的」な居住まいと顔つきの良さに、初見から射抜かれてしまった。メンタルヘルスの問題で休養中らしいが、切に養生してほしいと思う。

 

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EDMやトラップ隆盛のK-POPシーンのなか、こういうナンバーを繰り出してくるSEVENTEENには、それだけで嬉しくなる。「Left & Right」のゆるい感じも最高。

 

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ちょっとたじろぐような耽美性のあるMVだが、コロナ禍を歌ってここまでアイドルソングとして完璧なものにしているのに驚く。コロナ禍によって夏を失い、永遠の冬を繰り返すような「私たち」は全世界的なものだが、他でもないアイドルである「私たち=TXT」がアイドル活動の"旬"を失い続けるという切実さに意味が折り返すと、「私たち」がやすやすと連帯できない距離がそこに生まれる。
もちろん、コロナ禍の美化、アイドルを儚さとして消費する構造の温存など、違和感もある。それでも、である。

 

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BTSに関しては「花様年華」あたりから曲だけ好んで聴いていたものの、こうして改めて見ていくことで、彼らのアイドルとしての素晴らしさに開眼していくばかり。ちょっとした仕草が魅力的だし、自分が魅力的であることを隠さず見せてくれる。「SAVE ME」でRMのパートがはじまれば、椅子から立ち上がってノり出すメンバーたちのなんて美しいこと。

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最近は「ON」の映像を探して今さらいちいち感激しながら見ている。いわゆるオタク特有の評価インフレが入っているが、半ばは本気で、BTS「ON」は男性アイドル表現のひとつの頂点ではないかと思う。もちろん、シエナ・ララウの振付に支えられながら。

 

こうした群舞は特にそうだが、一部のK-POPのパフォーマンスは自分にとって大好きだった番組「SYTYCD」を思い出させる。オーディションを勝ち抜いたダンサーたちにランダムで、様々なジャンルの振付師が振付たダンスパフォーマンスを行い、視聴者投票で勝ち抜いていく。基本的に前半は男女のペアで踊られるのだが、トップ4になると同性同士のペアダンスが出てきたり、開票回の番組冒頭ではグループダンスがあった。ちなみに邦題は「アメリカン・ダンスアイドル」。
K-POPのアイドルたちの多くは優れたダンサーであると同時に優れたシンガーであり優れたラッパーであり、そりゃ面白いよねとしか言いようがない。そういえば、K-POPのアイドルグループはしばしば、オーディション番組を勝ち抜いたメンバーたちで作られている。

 

しかし、たしかに素人目にもスキルフルなメンバーたちが活躍するK-POPのアイドルは、デビュー前にきびしいトレーニングを積む練習生システムもあり、日本のアイドルと比較して"完成度"が高いのかもしれない。それでも、そうした技術的なアドバンテージの結果でのみ、K-POPのアイドルたちが面白いわけではない。
そして、そんな"完成度"というものは、複数のグループを、メンバーをひとつずつ見ていこうと思えば、差異のニュアンスに溶けて消える。技術が優れているから、自分たちで楽曲を制作しているから、振り付けているからという「自律した主体性」への大雑把な評価自体が、いつまでも「アイドル」に呪いをかけ続けているのは日本も韓国も変わらない。
ラップやダンスに長じる彼ら彼女らは、韓国の音楽業界の構造上「アイドル」として活動を続けざるを得ないこともある。つまり、幸か不幸か、たまたま彼ら彼女らは「アイドル」であったりする。そこには相変わらず曰く言いがたいねじれがある。が、まだ何も分からないK-POPについて、ひどくつまらない"何ごとも単純ではない"という感覚しかない。

 

ということで、ちょっとずつでも理解を深めるべく、日本語の環境に頼っていては限界があるなということで、韓国語をぼちぼち勉強し始めた。本当に始めたばかりでハングルを読むのもおぼつかないが、歌番組のテロップでメンバーの名前が読めた時の快適さに心から感動している。

*1:おどろくべきことに、ちょうどこれを書いてる最中に知ったBALLISTICK BOYZがいい。遅ればせながら今後はチェックします。

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