ストリップのきろく 2021年 6月

※7/19 体裁・タイトル等変更

14歳から取り続けている映画の鑑賞記録を例外として、大したログがない。
図書館の貸出記録など、いま見直せばなるほどとおもうこともあったろうに、半端なものしかない。
つよく肩入れして見てきた「劇団どくんご」も初見の感想はどこにもなく、漠然たるインパクトだけが記憶にあるのみ。中途半端な在宅期をはさんで2015年に「現場」デビューしたアイドルも、特定のグループ以外はどこでいつ何を見たかの記録はない。

 

まあ、忘れようにも忘れられないことだけ記憶に残ってれば充分なのだが、せっかく初見からの感想を書いていたし、個人的なインパクトの大きさを考えると、今後起きるだろう自分の視点の移り変わりがあとから参照できることに意味を感じた。
ということで、Twitterとはべつに、まとまったストリップの月例記録を残すことにした。いずれ観劇頻度が減ったとして、それはそれでひとつの記録でもある。

 

 

5月17日(月) [渋谷道頓堀劇場] 

星愛美(1)
愛あられ(1)
JUN(1)
翔田真央(1)
友坂麗(1)

初見。文フリ東京で『イルミナ』を購入後の翌日、いきおいで観劇。その流れは別記事にした。それにしても、人生初のストリップを日本トップクラスのベテランから洗礼を受けたことになる。ベッドショー(という呼称もまだ馴染まなかったが)では、どうしてか泣けてくるのに驚き。愛さんは本舞台の踊りが「よさこい」調で、どうしたものかとおもってみていると、ベッドで大きく転調。馴染み深い曲だったこともあり、これも不思議と持っていかれる感覚に。胸の周りにただようような指の置き方が印象深い。友坂さんの踊りには、声こそ出さないものの、ほとんど号泣。ただ立って、赤い照明を受けているだけなのに、場が"キマって"しまう。対して、ポーズの入り方は全身を投げ出すようで、そのたびに大きく涙が落ちる。
慣れないことで目の向けどころがさだまらないこともあったが、なぜか踊り子さんの表情を追ってしまう自分に気づく。どこを眼差しているのか分からない視線の束。かといって無表情だったり機械的であったりするわけでもない、特有の視線を記憶にとどめて、疲労困憊して帰宅。
今思えばもったいないが、もう一公演見るという発想がなかった。


6月4日(日) [川崎ロック座] 

沢村れいか(1-3)
香山蘭(1-4)
武藤つぐみ(1-4)
友坂麗(1-4)
小宮山せりな(1-3)
西涼(1-3)

ひどい雨風のなか、11時頃に川崎着。入場時、マスクの種類などまでしっかり管理している。広々した劇場。盆にちかい、下手側の端に位置どる。個別に記憶に残った踊り子さんについてはこれも別記事がある。
記憶というか経験とはおもしろいもので、このとき3回目までうまく入ってこなかった小宮山さんのハキハキした動きを今はよく思い出す。よく汗が散る「健康的」な姿。演目で使った椅子の背にも汗の跡が残っている。
はじめて"リボンさん"を見る。キュッと引き戻されるリボンの動きと、それを素早く巻取り、次の投擲に備える仕事人のような顔つき。
この日はじめて、舞踊研究者の武藤大祐さんとお会いする。共通の話題である「どくんご」や、アイドル現場のこと、友坂さんの踊りはとにかくわけが分からない、などという話をする。

 

6月6日(日) [渋谷道頓堀劇場] 

ささきさち(1-2)
漆葉さら(1-2)
宇野莉緒(1-2)
宇佐美なつ(1-2)
鈴木千里(1)

 

「宇佐美なつを観た日」として刻まれてしまった道劇は、前回のガラガラ具合は何だったのかというほどの混雑。ずっと後方柵で立見。この日、かなり重要な連絡を並行して行っており、脳が慌ただしいことになる。
ともあれ、ささきさんの2回目の演目が記憶に残る。デビューから2作目とのこと。ベンチや花などの小道具を用いて、雨のSEなども使った、トータリティを考えた演目、なのだが、1回目にはまったく素振りも見えなかった、ベッドでのギラつきに自分がよく見知ったライブアイドルのパフォーマンスを想起させられる。今以て、もっとも生々しく感じた演技であるし、その楽曲をどうしても使わねばならない、と思わされる強い必然性を感じた。もう一度観たい。
宇佐美さんは「黒煙」が初見。とにかく何もかもが巧すぎてひっくり返る。2回目は「spring vision」。とにかく何もかもが巧すぎてもう一回ひっくり返る。この日以来、完全に頭がおかしくなる。またこのとき「ID」を見逃してしまい、すぐに後悔することになる。
のちに、自分と入れ替わりで道劇に来た武藤さんが、宇佐美さんに「なんか熱狂的な人きませんでした?」と言っていたことがわかる。

 

6月11日(金) [池袋ミカド劇場]

山口百華(1-4)
JUN(1-4)
浅井ひなみ(1-3)
宇佐美なつ(1-4)
あらきまい(1-4)

頭がおかしくなったので、いっそしばらくクールダウンしようかと思ったのもつかの間、やはりと思い直して二度目の宇佐美さんを観に行くことに。朝からアホほど気分が浮き立っていた。劇場前でまた武藤さんと出くわす。挨拶もそこそこに「ヤバいですね」と言われる。ヤバい...この日、いわゆる「プンラス」を初経験。
開演前、本舞台にモニターが置かれていて、ソフトAV?のようなものが流されている。特に誰が目を向けているわけでもなく、なんともいえない空気。下手3列目端につくが、なにか見づらいので上手側に移動。
山口さんは笑顔がとにかく際立つ。語弊をおそれずあえて直截にいえば、明るい美人さんが踊っている、ということだけで舞台をもたせる力がある。なにかしきたりに基づくのかわからないが、フィナーレで他の人が出入りしやすいよう袖幕を持っていたり、人柄が伺えるような気に。
あらきまいさんは、ポラのときのやりとりが純度100%のアイドルのよう。女性ファンが多そう、とおもうと、やはり常連さんとお見受けする女性の方々がいらしていた。
宇佐美さんは「spring vision」と「positive」。後者は1曲目で大笑い。まさか!
思いがけず背景を共有する部分がわかり、ご縁というか必然性というか、深く納得してしまった。「positive」も、何もかも完璧としかいいようがなく、とにかくステージを見る幸福に打たれてしまい、白痴化してしまう。酒でも入ってるのかと思われたほうがいっそマシなほどで、あとから我が身を振り返って恐ろしくなるなど。
客の入り具合も塩梅よく、香盤も多彩で、ストリップ現場の良さを味わい尽くす。
また武藤さんだが、帰りがけに「ツイート期待してます」などと唆される。ならばと意気込んでるうち、地下鉄を大幅に乗り過ごす。銀座で降りる予定が、気づけば東高円寺などと言っている。

6月17日(木)[池袋ミカド劇場

山口桃華(4)
JUN(4)
浅井ひなみ(3)
宇佐美なつ(1-4)
あらきまい(1-4)

朝から雨。この日ははじめて(半ば強引に)友人を伴っていく。雨のド平日なのに満員。最後方上手側の柵に位置どる。
ほかの用事もあったので、少しゆったり目に入場していて、ほとんど宇佐美さんから観始める。1回目の「spring vision」が終わって明転すると、となりの友人から「推しメンかもしれん...」というつぶやきが漏れる。なにかに勝利した気分。
あらきさんが印象深い。この日、はじめて「体」の美しさをうまく受け取れた気がする。明確な扇情性が、気品と矛盾なく同居しているありかたに、脳が揺れる。オープンショーで客を見つめる視線が忘れがたい。
何回目かの合ポラで山口さんが変面の衣装で登場。ひとりだけ厚着に仮面をつけたよく分からない人が混ざっていて場内一同笑う。
宇佐美さんは、さすがにもう冷静に観られるだろう、いや、念には念を入れてと、相当不親切に構えてみてると、ことごとくそうした不純さをアンロックしていく。構築された芸が起動させる「踊りを見ることの喜び」を、秒単位で叩き込んでくる。ラストの「positive」では少し泣く。
ポラに並ぶのに財布から札を出すと友人から「流れがスムーズすぎて板についている」などと言われる。ポラを撮るのは3現場目だし、そもそもアイドルの特典会もめったに行かないというのに、なぜ。
言い残したことがあって、はじめて脱衣でもポラを撮ることになるが、まったく慣れないので本当にただ単にダメな人間になる。ちょっと込み入った感想も伝えたけど、うまくフェアネスを保てる気がしなくて少し自分に落ち込む。
JUNさんのムード歌謡的な曲で揃えられた演目に陶然。音楽の快楽を増幅してくれる踊り。


6月19日(日) [新宿ニューアート] 

秋月穂乃果(1-3)
友坂麗(1-3)
木葉ちひろ(1)
小春(1)
笠木いちか(1)
西涼(1)


この日はストリップ初観劇の友人らを連れて行く。雨というのに大大大混雑。かぶりつきの席を譲って、一番うしろの壁にひっついて観劇。
トップの秋月さん。まさかのカオナシの扮装で現れ、初のストリップがトリッキーすぎる経験になったことを思って笑ってしまう。しかし、そのままポールを掴むと、ああこれは、とすぐ納得がいったので、幸福な出会いになるだろうと予感する。ベッドはエアリアルのティシューのような布を纏いつつの演技。選曲が趣味にバッチリだったのもあるが、相当に良い。そして、意外にも素直にまだ感じたことがない「綺麗だな」という素朴な感想を抱く。とても綺麗だった。加えて、3回目はなぜか舞台奥の鏡面を見せる演出が加わっていて、さらに良い景色に。
友坂さんは夏の演目「恋花火」。出てきた瞬間からまったく違う。ほとんど催眠にかかるように、体が揺れる。団扇の揺らぎは極端に遅く・小さく、存在しないはずの風が体の内に立って、自律を巻き込んでいく。気づくと泣いている。
女教師風の役を演じる「GTR」は、友坂さんという人間の広さというか、芸に身を投じる人としての、あまりの格の違いに愕然。ストリップという芸能を、一方的な鑑賞ではなく、協働として成立する場として理解しているから、そこに衒いなく我々を招き入れる。指し棒で会場の全員を指し示し、確実な「1人」としてそれぞれを受け止める。満足気にほほえみながら合計人数を大きな声でコールすると、目つぶしのライトがあたり、暗転へと移る刹那に友坂さんのシルエットが浮かぶ。その全身の輪郭と上がった口角のかたちを、たぶん私は生涯忘れることがない。
新人の笠木さん。衆人環視のもと新人さんのステージを見ることに、妙に居心地の悪い思いをする。人が「裸になる」という出来事を見るには、やはり大まかには「芸」と呼べるものが、間を取り持つ必要があるのだなと改めて思う。2作目以降、笠木さんを見る自分の視線がどう変化するだろうか。

 

6月25日(金) [ライブ・シアター栗橋] 

御幸奈々(1-2)
黒井ひとみ(1-2)
蟹江りん(1-2)
悠木美雪(1-2)
望月きらら(1-2)


地元でよくこういうところに仕事に来たな...と感慨にふけりつつ田んぼを横目に歩いて到着。遠くにスーパーの看板が見えたので食料調達、とおもいきやまさかの物流センター。何もない!
中に入るとおじさんが何か食いながら応対。中に入って下手側につく。ベンチとかでなく、普通の椅子。たしか消防法のとおり、それぞれの脚は結束バンドで連結されている。嫌な予感があったので冬のランニング用ナイロンジャケットを持参したが、場内異様な寒さ。というか、位置どったところが送風口ジャスト。席を移るにも微妙に混み合っている...なんとか耐えに耐えて2回で離脱。
今回は、黒井ひとみさんを観にきていた。開演前に客の声で聞こえたけど、どうやらこの日が初出しの新作。この少ない観劇経験からも同パターンのテーマを2回見たので、ストリップでは定番ネタなのだろう。コントふうのシーンもあり、コミカルな印象もあるが、ベッドは濃い性交のシーン。
香山さんがウルトラスムースな編集の妙で性交を処理するなら、黒井さんは引きの固定長回しでといった塩梅。体位の変更の間延びした姿勢もひとつの時間として取り込む。
望月きららさんが圧倒的に良かった。1本目はドルオタ(?)にはサンバイザーのおじさんがうろついている絵面が思い浮かんで仕方ない呪いにかかってるアレからはじまり、最後までアイドルで突っ切る。
止め画の作り方がキマってて、カメラマンだったら楽しいだろうなと思うなど。衣装を翻したりするのも、いい具合の「形」になるよう狙ってるようにみえる。2本目は椅子やムチなどのギミックを必要十分に使い切る。やはり、うまいひとはここが違う気がする。
2演目ともすごい充実感。はじめて抱いた感想だけど、どちらもヘアアレンジが眼を惹く。帽子やアクセサリを取ったあと、髪型がすごく際立ってみえる不思議さがあった。

そして、当たり前かもしれないが、自分がいいなと思った踊り子さんはポーズの精度が圧倒的に高くみえる。形や形に入るまでのタメもそうだけど、音楽をきっちり聴いてるからこそ成立するタイミングで、ポーズがなされる。まあ、友坂さんの自在さは例外的だとしても。