もさもさとしていたら、あっという間に今年も終わりです。
まず、関係各所、および観客の皆々様、至らぬ私へのご助力本当にありがとうございました。
今年は何といってもまちくるパフォーマーズ仙台の活動にはじまり、小林劇場および空転劇場へのMCとしての出演、そして今月の光のページェントでの大道芸と、これら以外にも、新たな場での活動がいくつもありました。
創作的にはあえてセーブして、慣れない大道芸を、体に少しでも染み込ませる時間と割り切って過ごしました。その甲斐あってか、少しずつでも慣れを感じる時もちらほら。私の仕事が始まるとしたら、ここからです。いつも以上に周りの方々から感想をいただくことに意義を感じています。
月次な文句ですが、来年も変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願いします。
さてここからは、毎年、一年を振り返ってなにが面白かったか、というのに時間を割くのが年末の楽しみでしたので、それをあれして書きます。
【映画】
『Playback』
映画『Playback』予告編
すっかり観る本数が減っているここ二年、何度も見てみたいと思わせる映画は少なかったのでしたが、三宅さんのこの『Playback』は、ようやく観られたという嬉しさも相まって、紛れもなくベスト1です。
制作当時、私とそう変わらない年齢の監督が、どうしてここまで役者の魅力を引き出せるのか、魔法のようだとしか言いようがないです。また、村上淳さんのスケボーの(音!)格好良さ! 近年、DVD化されることなく映画館上映によってのみ出会える作品が少なくありませんが、いつの日か手元にこの作品が置けることを切望します。新作はいつになるのかなあ。
【本】
『介護するからだ』『A子さんの恋人』『HHhH』『川の光 (シリーズ)』
本も、年末の休館間際の図書館に行かなかったことなどここ7,8年で初めてというくらい読まなかった体たらくです。映画や本を読まないのは、なにか重大なサボりで、恥のような感覚があります。いやはや。
そんな中でも、年始は例年通り小説を読む傾向があり、柴崎友香さんや多和田葉子さんに面白いものがたくさんありましたが、ことに松浦寿輝『川の光』シリーズに熱中しました。チッチとタータのネズミの兄弟はもとより、松浦さんの愛犬がモデルのタミーのかわいさといったらないのでした。
『HHhH』はナチス・ドイツを扱った作品のひとつの新たな基準と名高いもので、具体的にこれを語る言葉を持ちませんが、やはり凄まじい作品で、まずは読めという類のものと思います。
『A子さんの恋人』は2,3巻が出まして幸福。今一番好きなマンガで、なにかシンパシーを感じさえします。
『介護するからだ』は細馬宏通さんの目とカメラによって、介護の現場にある「動き」が構造として引き出されます。ライヴパフォーマンスの場に身をおくものとして、これほど頼りになる本があるのかというほど、そして、今後こうした本がもっと出てきてほしいのだ、と願わずにはいられません。平倉圭さんのダンス論が待たれる。
【音楽】
これはApple Musicさまさまでたくさん聴けました。しかしアルバム単位で聴いたとなるとそれほどでもなく、曲単位で聴いていたのだなあと改めて。なので、ベスト・トラックと言うかたちで。
「Formation」
Beyoncé - Formation
南部大地とのユニットマヤマの稽古を著しく停滞させていたこの曲。この曲も、どう凄いのか説明できる語彙がなくもどかしいものの、いや、まあわかるだろという気持ちにも。ダウナーなのに高揚する。
「ZUTTO」
今年は、YENTOWNからこの三人が出した三枚のEPと共にあったというくらい聴いてました。しかし最後の最後に来たこれ、マジでヤベえっす。トラックのリズムと脱力したフロウ、ヤベえっす。
「LOVE」
もはやオールタイムベスト級に好きな『Chiryu-Yonkers』のC.O.S.A.がKID FRESINOと共作したこの作品。いやー、聴いた。直接アルバムとは関係ないけれど、FRESINOのインタビューも最高に素晴らしい。強いて言うなら今年のベストインタビュー。
「忘却 feat. KOHH」
これはPVがないので。宇多田とKOHHの組み合わせに驚いたのもつかの間、アルバムを通して最も気に入る曲になるほどの仕上がりに泣かされました。KOHHのリリシズムと宇多田の声が絶妙としか言いようのないマッチングでした。
「二人セゾン」
完全に欅坂にもっていかれてしまったこれ。いやー、CDJも良かったですよ、と、いつの間にか現場にも足を運んでいるのでした。完全に体に入りきっている感じはまだまだしませんが、ソロダンスのパートでは、平手さんがうまく"乗りこなす"感じがあるときはあり、それはいいものです。
まだまだありますが、これでトドメでしょう。
「Amore -蒼星-」
なんでこのテイクか? そりゃここにいたからですよ!
4月2日の夜明けの大阪のLVで初めて見て以来、何度驚かされたのか、この曲のSU-METALは、SU-METALであるところの凄さを完璧にドライヴさせ、観客を置き去りにすることも厭わない、文字通りの圧倒。泣く。
【ライヴ】
ひろく演劇などまで含めて、ライヴとして。
BABYMETAL Cologne,"白ミサ" 東京二日目,東京ドーム両日
色々と言いたいことはありますが、端的に。泣いた公演です。ライヴで泣くというのがそもそも初めての経験です。どくんごですら、落涙に至ったことはない。
℃-ute CDJ16-17
つい先日のことです。何一つといっていいほど予備知識はなく、いざ見ても趣味に合うものは何一つない、のに、これほど自信に溢れ、甘えがなく、かつベテランの臭みがないという稀有なステージでした。
dCprG FUJI ROCK FESTIVAL '16
あまりの良さに、午前中ながら、もうここで帰ってもいいとすら思いました。
次のライヴには確実絶対に、参加しなければなりません。
Robert Glasper Experiment 同上
ついにライヴ体験。いいのなんて分かりきっていましたけれども、いざ見てしまったとき体が感じるグルーヴの生々しさは、忘れがたいものとして体の方で勝手に記憶し続けることと思います。
地点 『スポーツ劇』
地点の芝居を実際に見るのは二度目。私にとって、どうしても忘れられないと強く意識することはなくとも、折に触れて話題に出し、その声や仕草を思い出すのだから、きっと影響を受けているのだと思います。先日は東京でニアミス。京都のアンダースローで見る機会を狙います。
加納真実 Parade(s), festival des arts de la rue
フランスのフェスティバルで観た加納さん。私が見られた範囲の、すべての出演者でダントツに豊かで、囲いきれない複雑さと、多幸感に満ちた仮面舞踏会に、思わしくない体調が整って、これぞパフォーマンスと打たれました。
とにかく今年は移動ばっかりしていた、という印象で、それにともなって思いがけない出会いや展開が数多ありました。出かければ、なにか持ち帰るものがあるという塩梅で、来年はまだ何か集めるものがあるのか、それとも集めたものでまとまった仕事をすることになるのか、まだぼんやりとも分からない状態です。
まずは残りの数時間、大晦日という日に流れる特有の時間の重さを身に受けつつ、次へ備えます。それでは、また。