20190701 BABYMETAL AWAKENS -THE SUN ALSO RISES- ベビメタ再始動について

昨年の重すぎるYUIMETALの脱退について、また藤岡幹大さんの逝去について、ついに何も触れないままここまでやってきました。

 

確かに熱量それ自体が落ちたといえばそれは否定しがたく、とはいえ幕張・SSAと2公演"ダークサイド"のベビメタも観ていました。しかし外野が憶測するにはあまりにセンシティヴなすべてについて、最大限に斟酌しつつも、煮え切らない感想しか抱けないものでした。だからといっておさらばできるほど切り替えも早くないし、虚心に肯定できるわけでもなく...そうこうしているうちに、半年以上の時間が過ぎ、横浜アリーナでのライヴになりました。圧倒的な期待感とともにはじめてのベビメタを観に行った2015年とは違って、気軽な散歩程度の気持ちで会場へ向かったのですが...

 

これもまた遠回りせず、結論から言いましょう。おかえりなさい!これからもよろしく!です。私はまたBABYMETALをかなり熱心に見ていくことになるでしょう。それはともかく。

 

きっと多くの人が感じたことだろうと架空の同士を想定しますが、2曲目「メギツネ」冒頭でSU-METALが日本語で、それもかなり心情を素朴に吐露するように「会いたかったよー!今日は最高の一日しようね!」とフロアへ語りかけた瞬間、お互いに抱えていたわだかまりが水に流されるようでした。
この喋りが、予め決められていたことなのか、それとも突発的に口をついて出てきたことなのか知る由もありませんが、厳格なコンセプトに基づいてグループとショーを構成する『BABYMETAL』としては、異例なことですし、なによりそのコンセプチュアルな"厳格さ"が齟齬をきたしているように見えた昨年の展開が、打ち消し合うように、チャラになってしまう...あまりにも簡単に懐柔されすぎなのかもしれないけれど、あのタイミングでステージ上からあの言葉を投げかけられて心が頑なな人は、もうベビメタと袂を分かたざるを得ないでしょう。それはそれで悪いことではない。

 

 また何より、SU-METALの無防備な笑顔も印象に残ります。今までもパフォーマンス中に笑わないではなかったけれど、なにかと頬がゆるむようにしている姿は、ときに憑依系などと言われもした姿と全く逆に、憑き物が落ちたとでも言いたいほどです。この余裕ともつかない、自信の現れともつかない、自然体と言っていいのかもわからない、ステージでのあり方は、私自身は確実に見たことのない姿でした。「SU-METAL」が限りなく「中元すず香」に近い状態でパフォーマンスしていた、と言ってみるくらいしか、その不思議な感触を伝えられません。かつてのようにギラギラと持て余す力を開放するのではなく、さりとて達人めいた脱力があるともいえず、この魅力はどこからやってきているのだろうと掴もうとしても掴みきれない。

 

私にとってBABYMETALは快楽というよりは謎の対象–––我知らず没入してしまう深い集中への誘い–––です。この謎に手招きされるようにして、さらに数々のアイドルに出会っては、何かを納得したつもりになってきたタイミングでまた入口に引き戻されてしまった。

 

そして鞘師里保さん、藤平華乃さんら「サポートダンサー」たち。特に鞘師さんの話題は、横浜アリーナのライヴと昨日のグラストンベリーでの全世界中継を発端に、ハロプロ界隈やその他ドルヲタたちの衆目を集めることになった。私自身、娘。についてなにひとつ知らないので、当日もさっぱり気づかないのでしたが、様々な情報が集まってくるうちに練り上げられている強い物語性と、その磁力に驚いています。「アイドルと物語」という、いまだ古びない受容の形式は、意識せずとも忍び込んで消費のモチベーションに作用するでしょう。書きぶりの通り、自分はこの物語性に少し警戒しています。が、鞘師さんやさくら学院の現生徒会長がステージに上る、ということの面白さにも抗えないで、むしろ楽しんでいる。何なのだろうかこれは。

 

 そもそもBABYMETALとは、「何だこれは!」という驚きと違和感をもって世に出てきたのでした。メタルというマーケットの広さ、クールジャパン(死語ですね)的な文脈から成功が分析され、メンバーの歌唱力やダンスのスキルの高さ、楽曲のクオリティに基づく技術論が連なり、そのインパクトを解き明かそうとした有名無名の人々の言葉はすでに山と積み上がっている。それらに目を通して、何かがわかった気になる。が、こうしてBABYMETALが「再出発」したかに見える今、私は積み上げられた分析と論理の山の上で、改めてもう一度驚き直すしかありません。「何だこれは!」と。

 

 ...これは横アリ初日の翌日に途中まで書いていた文章なのですが、昨晩のグラストンベリーの映像を見ていて、久しぶりにBABYMETALでしか感じられない、もはや"ゾーン"とでも言ったほうがいいような深い集中を感じたのでした。あれは、ベビメタにしかない時間なのです。どうしてそうまで見てしまうのか、本当にわからない...今回は「わからない」、ということを2000字もかけて繰り返してるだけなのですけど...

 

 

BABYMETALは10月の新譜を控えて、その前にUK・USと実に長いツアーが始まります。きっと何か賑やかなニュースを運んでくれることでしょう。楽しみだな〜!