素描_

素描_11結

6:46という、普段からすればおそい地下鉄に乗って、だからだいたい7時くらいだったろうか、新橋駅で横須賀線に乗り換えようとすると、人でパンパンの列車が到着した。かたわらには大きい荷物を積んだキャリーカート。手慣れた様子で後ろ向きに乗り込む通勤客…

素描_11中

寒さに耐えかねて現場を抜け出して、最寄りのコンビニに行く。送られる車の窓から姿を認めていたファミマ。入店するなり、やきいもをすすめる、ボーカロイドのような声が延々とリピートしているのに気づく。焼きそばパンにファミチキとカロリーを摂って身体…

素描_11頭

そこまで周到な方ではないにせよ、ひとつのミスもしくは勘違いが、いくらなんでも無残すぎるほどに1日の足場をことごとく崩すことがある。思えばそれは確かにスプレッドシートに書かれており、まさしく勘違いあるいは思い込みによって見落としており、それで…

素描_10結

はらだ「わたしたちはバイプレーヤー」を読んだ。BLというジャンルがどのような結構をもったものなのか、自己言及的に描くすぐれた作品と思った。話題作となっていた売野機子『インターネット・ラヴ!』もまた、BLというジャンル、ひいては男性同性愛がどの…

素描_10中

レモンミント。ミントは中東っぽい感じの?という、今までに重ねたやり取りを多分に含んだオーダーの、気のおけない、ざっくばらんな、しかしひとつの約束のような確実さを持った、そうした厚みのある短い会話。やってくるのは極上と言っていいシーシャであ…

素描_10頭

Heaven Can Wait. その名前の香水が販売されることをTLで知った。『天国は待ってくれる』。ルビッチの映画のタイトルである。天国は待ってくれる。 ムエットに吹き付けられた香りを嗅ぐ。なるほどいい香りだ。しかしおそらくは、この香りを纏うならば、それ…

素描_09結

川を渡る。つい川面に目をやってしまう。時々、川は遊歩道の方へと溢れそうなほど、水位が増していることがある。雨が降ったわけでもないのに。しかし川の色もどこか尋常ではない。ひた、ひた、と岸に水が打ち寄せる。あと少し、もうほんの少しで溢れてきて…

素描_09中

年々に伸びていく枝ぶり。木の下で仕事は行われる。杜の都と言ってみせるくらいには木々の多い土地で、これが当たり前と思っていると、今の住処のひらけていることに改めて異なる土地の異なりのありかたを知る。内見をしたのは3月10日で、時期が来れば花火な…

素描_09頭

浅草駅方面に歩く人群れの多い新仲見世通りを、仲見世の方へ向かって女の子がふたり、流れに逆らうかっこうでバタバタと走っていく。急いでいるわけでもなさそうで、タリーズを越えたあたりで走るのをやめる。アハハと笑いあっていた。笑っているふたりを追…

素描_08結

冷たい風が吹いて、これはひと雨来るかなと、昨日もそうだったことを思い出しつつ構えていると空振り。隠れていればいいのに太陽まで出てきて空は晴々としている。かと思えば、薄い雲だというのにどこから流れてきたのか大粒の雨が10分くらい降った。 雨が降…

素描_08中

Young Thugの「Punk」というアルバムを聴きはじめる。USのラッパーでは誰が好きか、という話の流れで開口一番にヤンサグの名前が出て、ほぉーと頷いてLil Uzi Vert とかJ Coleとか……と名前は並んだが、やっぱこのヤンサグの2021年ころに出たアルバムっすかね…

素描_08頭

帰路につく新幹線でぼーっとしていると、東京の友人たちの顔が幾人も思い浮かんだ。彼らと彼女らは、この数日に再会した仙台の誰とも繋がっていない。それがみょうに不思議だった。 いや、何も不思議なことはないのだが、感覚としては不思議なのだ。背後に遠…